帝王切開とは
緊急帝王切開
また、緊急的な処置で帝王切開を受ける方もいます。緊急帝王切開の場合は以下のような理由が考えられます。
・赤ちゃんの状態が良くない
・出産が長引いて母体に危険がある
・赤ちゃんの回旋がうまくいかない
・常位胎盤早期剥離
帝王切開のリスク
帝王切開の施術後は、長時間ベッドに横たわることでの「肺血栓塞栓症」のリスクが高まります。しかし最近では、経過がよければ手術翌日に歩行することが一般的となってきています。
また、ベッド上で足を動かしたり、医療用の弾性ストッキングで下肢を圧迫することで血栓の予防が出来ます。帝王切開のその他に考えられるリスクは以下のようなものがあります。
・次の妊娠時に前置胎盤になりやすい傾向がある
・帝王切開の回数が増えるほど癒着胎盤、膀胱損傷、子宮摘出のリスクが増える
・次回妊娠で普通分娩を選択した場合、子宮破裂のリスクがあがる
・麻酔薬によってショック状態に陥る場合が考えられる
・体質により、術後傷口が痛んだりケロイド状になることがある
・胎児の肺に羊水が残ってしまうことで、新生児一過性多呼吸になりやすくなる(生まれて数時間で多呼吸となるが、通常は2~3日で治まり障害が残ることはまずない)
帝王切開の流れ
手術開始後、すぐに赤ちゃんが誕生

帝王切開を受けるにあたって以下のようなことが行なわれます。
【事前準備】
・予定帝王切開の場合は前日に入院をし、前日の夜から絶食となります。
・採血が行なわれ、貧血がなどの症状が無い事を確認します。
・点滴が行なわれます。
・同意書にサインし麻酔をかけるために剃毛、消毒を行なわれます。
・麻酔をします(予定帝王切開の場合は腰椎麻酔や硬膜外麻酔。緊急帝王切開の場合は全身麻酔になる場合があります)
【切開】
ママと赤ちゃんの状態によって、下腹部の切開の仕方が変わります。予定帝王切開の場合には、傷口が目立たないように横に切る場合が多いです。緊急帝王切開の場合には、赤ちゃんを早く取り出すことができるように縦に切る場合があります。どちらとも、子宮壁は横に切開します。
【赤ちゃん誕生、処置】
お腹を切開してから赤ちゃんが誕生するまではだいたい2~10分くらいです。ママの意識がある場合には産声を聞くこともできますし、赤ちゃんを抱っこすることもできます。胎盤を取り出し、子宮や腹壁の縫合をします。
【手術後の生活】
手術後は翌日から少しずつ歩く練習をスタートさせます。赤ちゃんのお世話もママの体調を見ながら少しずつ始まります。
手術後翌日は、まず水分からはじまり流動食、おかゆとだんだん普通の食事に戻していきます。入院期間は7日~10日前後となります。
帝王切開の疑問

・痛みを感じる?
まず、麻酔の痛いがあります。麻酔は長い針を腰のあたりに刺すことになりますがこれはチクっとした痛みを伴う程度です。
手術中は麻酔によって胸から足の先まで痛みを感じなくなりますので、手術中の痛みはほとんどありません。ただ胎児を引き出すときの感覚はあるようです。人それぞれ痛みの度合いは異なるので心の準備は必要です。
・赤ちゃんの声は聞こえる?
下半身麻酔でもほとんど意識はあるので、産声は確認できる事が多いです。全身麻酔をした場合は意識がないので聞くことができません。
・立ち合いはできる?
病院のルールによりますが、母体が危険な状態で無い限り開腹中でも立ち会い可能な事が多いです。手術中の様子がわからないように工夫もされている場合がほとんどです。
帝王切開の費用
出産育児一時金
出産費用の一部を「出産育児一時金」として、加入している健康保険組合から受け取ることができます。
赤ちゃん1人につき42万円(産科医療補償制度に加入していない病院での平成27年1月1日以降の出産は40.4万円)が支給されます。
直接支払制度という制度もあり、出産育児一時金を健康保険組合が医療機関に直接振り込んでくれます。事前にこちらの制度を申請しておくと、退院時には出産育児一時金を差し引いた差額を支払えばいいため、高額の現金を用意する必要がなくなります。
帝王切開の医療保険適用

もし医療保険など、手術を保障する保険に加入している場合は、帝王切開は手術給付金の支払い対象となります。
ただ、医療保険のなかには入院給付金のみのものがあるので、手術給付金が出るかどうかは加入時に確認したほうが良さそうです。手術給付金と入院給付金を合わせると10万円程度が一般的なようです。
また、医療保険の種類によっては保健加入の時期が妊娠何週目と基準を設けているところがあるので、もし妊娠の可能性があるのであれば、早めに加入しておいたほうが良さそうです。
その他以下のような条件によって給付金の内容は変わってきます。
・予定帝王切開あるいは緊急帝王切開
・帝王切開を行なう施設(公立病院・私立病院・個人産院など)
・手術を受ける地域
・大部屋あるいは個室
・入院日数
・入院時期(年末年始の入院など)
・出産時間(深夜の出産など)
また、一度帝王切開を経験すると2回目以降も多くの病院では予定帝王切開をえらんでいるようです。一般的には医療保険が適応されるため、手術給付金・入院給付金の対象となります。
ただし医療保険によって第一子出産後何年以内は支給なし、などの決まりがある場合も。詳細は加入している保険会社に事前に問い合わせましょう。
もしもの時の未熟児養育医療制度
もしものときのために知っておきたい制度として「未熟児養育医療制度」というものがあります。この制度は未熟児と判断された乳幼児に対して、必要な入院医療費を助成するものです。
切迫早産となった場合に帝王切開で生まれてくるお子さんの場合は、未熟な状態で生まれてくる場合も十分考えられます。
未熟児養育医療制度を受けるには一定の要件があります。また申請も必要となるため、必ず住んでいる自治体で確認をしましょう。
帝王切開の産後のケア
母乳がでるかどうか
帝王切開で出産を経験すると母乳が出にくいという説がありましたが、実際にはそんなことはありません。出産を終え、胎盤が取れたその瞬間から母乳が出るという仕組みになっています。
しかし、帝王切開後の母体は大きな負担を追うため、赤ちゃんに乳首を吸わせることが困難になり刺激が少なく母乳が出にくくなっているというケースもあります。他にも母乳が出ない原因としてストレスなどがあげられるため、帝王切開が問題とは言いにくいようです。
TOLAC、VBACとは
TOLAC(Trial of labor after cesarean delivery)とは帝王切開既往後に経腟分娩を試みることを言い、VBAC(Vaginal Birth After Cesarean)とは、既往帝王切開経験がある妊婦さんで経腟分娩が成功した場合を言います。
前回の出産から1年以上経過している、母体や胎児に問題がない、などの条件をクリアしていれば、TOLAC(トーラック)と呼ばれる、帝王切開後の経腟分娩が可能となる場合もあります。
まとめ
帝王切開と聞くと不安になる方もいらっしゃるとは思いますが、今回の記事で帝王切開についてわかって頂けたかと思います。
帝王切開を考えていない方も緊急手術が必要となった場合は、帝王切開を行なう場合があります。きちんとリスクと利点を理解して、突然の事態にも困ることの無いようにしておきましょう。
・表示価格は、改正前の消費税率で掲載されている場合があります。ご了承ください。