産後は妊娠しやすい?
プロラクチンの働きが排卵に影響

出産により子宮や卵管がきれいになるため産後は妊娠しやすくなる、と言われることがあります。確かに出産によって子宮内膜が剥がれ落ちますので、着床しやすくなることはあります。
ただし、妊娠しやすくなるとは言い切れません。むしろ妊娠しにくい傾向にあります。これは出産後たくさん分泌されるプロラクチンというホルモンが原因です。
このホルモンには母乳の出をよくする働き、そして排卵を抑える働きもあります。授乳をしている間はプロラクチンが分泌されますので、授乳中は排卵が起きにくくなります。着床しやすくなっても排卵されていなければ妊娠しませんので、産後は妊娠しにくいのです。
もちろん個人差はありますので、授乳中でも排卵する場合もあります。産後すぐの妊娠を希望しない方は避妊を心がけましょうね。
産後でも性行為の際に避妊しなければ妊娠することも
産後は赤ちゃんのお世話で夜中に起きたりもしますので、基礎体温を正しく計ることが難しいです。またまだまだホルモンバランスが整っていませんので、排卵周期も不安定となります。そのため、もう排卵してるのか、次はいつごろ排卵するのか、といったことを把握しづらく、避妊しにくくなるのです。
前述の通り、授乳中であっても排卵することはありますので、性交渉すればもちろん妊娠することもあります。産後はじめての排卵の時期と性交渉が重なれば、生理がくる前に妊娠することも当然あるのです。
このように、まだ妊娠しないだろう思っていたのに妊娠したというケースが多いため「産後は妊娠しやすい」と噂されるようです。
排卵・生理はいつから?
排卵・生理はいつから始まるの?

前述の通り、母乳が作られる間はプロラクチンというホルモンが分泌されることにより、排卵は抑えられます。赤ちゃんが母乳を飲む量が徐々に減ってくるとプロラクチンも徐々に減り、代わりに排卵を起こすホルモンが出てくるようになってきます。
そのためどのような授乳を行うかによって、排卵が再開する時期に影響が出ます。授乳方法には、完全に母乳で育てる完全母乳育児(完母)、完全にミルクで育てる完全ミルク育児(完ミ)、そして母乳とミルクで育てる混合育児があります。このうち、最も生理の再開が早いのは完全ミルク育児の場合です。
母乳や完ミ…授乳方法による生理再開の違い
完ミ(完全ミルク)育児の方の中で、約40%の方が、産後6週間以内に生理が再開します。また、残りの方も産後2~3ヶ月以内に再開することが多いです。もちろん個人差はあり、産後6ヶ月から1年の間に再開する方もいます。
そして、最も再開が遅いのは完全母乳育児の場合で、産後6ヶ月から1年の間に再開することが多いようです。中には母乳をあげている間は再開しない方も多く、卒乳・断乳の3ヶ月以内に再開したという方も。
特にたくさん母乳が出る方は再開の時期が遅くなることが多いようです。完全母乳育児の場合は再開が遅れる傾向にありますが、約15%の方は産後6週間以内に生理が再開します。授乳期間中は生理がこないわけではありませんので、注意しましょう。
混合育児の場合は、完全ミルク育児と完全母乳育児の中間、産後3~6ヶ月くらいの間に生理が再開することが多いようです。
帝王切開の人は生理再開が遅い?
なお、帝王切開の場合は体力を消耗するため生理の再開が遅いという方もいらっしゃいますが、実際は関係ありません。ただ、ストレスがたくさんかかると生理の周期や出血量に影響が出たり、再開が遅れたりする傾向があるようです。
あまりにも生理の再開が遅れるようでしたら、産婦人科で相談してみましょう。完全ミルク育児の場合は、産後6ヶ月から1年を目安に受診してください。混合育児や完全母乳育児の場合は、卒乳・断乳から3ヶ月しても再開しない場合は相談してみましょう。
無排卵月経も

生理が再開しても、排卵が起こっていないことがあります。これを無排卵月経といい、約30%の方は産後1回目の生理が無排卵月経になるといわれています。
無排卵月経の場合、1月に複数回生理がきたり、次の生理までの間隔が長くあいたりします。排卵を伴った生理かどうかは、基礎体温をつけることでわかります。低温期と高温期がはっきりわかれない場合は、無排卵月経である可能性が高いです。
何度か生理がくるうちに排卵は起こるようになってきますが、3周期目になっても排卵していなかったり、生理と生理の間が3ヶ月以上あくようでしたら、一度産婦人科で相談してみましょう。
また、授乳中は無排卵月経となることは多いので、あまり心配はいりません。ただ、この場合も卒乳・断乳して3週期目になっても排卵していなければ、産婦人科を受診しましょう。
授乳中の妊娠について
妊娠の兆候・症状

授乳中であっても、初めての妊娠の時と同様に吐き気や頭痛といった妊娠初期症状が出ます。また、症状の重さも軽かったり重かったり、とバラバラなようです。
ただ、妊娠するとホルモンバランスが変化しますので、母乳が出にくくなることがあります。そのほかにも、授乳中に乳首や下腹部に痛みを感じたり、つわりが早めに出たりすることがあります。
卒乳・断乳した方がいいの?

授乳で出てくるプロラクチンというホルモンには、子宮を収縮させる働きもあります。妊娠初期に子宮が収縮すると流産につながることもありますので、卒乳・断乳を検討されるかもしれません。
ただ、授乳しても流産の確率は変わらないともいわれています。まずはお医者さんに相談し、指示に従いましょう。
なお、妊娠によるホルモンバランスの変化で母乳が出にくくなるかもしれません。栄養が足りないようでしたら、フォローアップミルクや離乳食で補ってあげましょう。また、母乳量が減ると自然と卒乳することもあります。
子宮を休ませることも大事です

次の妊娠までの間隔が短すぎると、早産や低出生体重児のリスクが高くなるともいわれています。少なくとも半年から1年ほどは身体を休め、しっかりと回復させることが大事です。
特に帝王切開の場合は、最低1年はあけるように指示されることが多いです。それは、切開してから子宮が回復していないと、妊娠・出産時に子宮破裂を起こしたり癒着胎盤(赤ちゃんが産まれても胎盤が出てこないこと)になったりするリスクがあるからです。
また、産後すぐに妊娠をすると、自律神経のバランスが崩れ、産後うつの状態が長引くことがあります。さらにホルモンバランスも乱れがちですので、次の妊娠までにはしばらく期間を設けた方が良いとされています。
産後間もなくは基礎体温の周期が安定しません。これはホルモンバランスが乱れていることを意味しており、この時に妊娠するとママの身体が不安定な状態で赤ちゃんを育てることになります。排卵が起きても、基礎体温の周期が安定するまでは妊娠を控えることをおすすめします。
専門機関へのご相談はこちら
※健康状態に心配なことがある場合や受診の目安に迷った場合は専門機関へのご相談をおすすめします。以下のような窓口もご活用ください。
助産師会 相談窓口
https://www.midwife.or.jp/general/supportcenter.html
まとめ
ママの気持ちや身体が十分に回復していないうちに妊娠すると、思わぬトラブルが起きることもあります。
次の妊娠を希望する場合は体調や環境をみながら検討し、赤ちゃんを迎える準備をしましょうね。
(文章作成:米奉行)
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