妊娠、出産時に痔になる原因

妊娠出産をきっかけに痔に

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近年、痔は生活習慣病の一種であるという考え方が浸透してきました。高血圧や糖尿病と同じで、普段の生活や食事が痔の発症に影響を与えると言われています。

しかし中には、元々の遺伝的要素から、どんなに生活習慣を整えても痔になってしまう人もいます。その場合には、手術で治療したり、痔を悪化させないようにしたりと、気をつけながら暮らしていくことになります。

更に、妊娠や出産を機に痔を発症したり、もともとあった痔が悪化したりする場合もあります。では、妊婦さんや産後のママはどういった点に気をつければいいのか、これから詳しく見ていきましょう。

痔ができる場所

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痔ができる場所は、肛門内の歯状線を境に、大きく二つに分けることができます。歯状線とは、肛門の皮膚と直腸粘膜の境目の線で、肛門から上に2センチほど上がった部分にあります。

この線の上側、つまり直腸粘膜には痛みを感じる神経がないので、痔ができても痛みを感じません。逆に、線の下側には多くの痛感神経が走っており、少しの刺激でも大きな痛みを感じてしまいます。

この線の上側にできるいぼ痔を内痔核、下側にできるいぼ痔を外痔核と呼びます。また、切れ痔は線の下側、肛門の皮膚にできるので、排便の際に痛みを感じます。これらの痔の症状については、「痔の症状」の項で詳しく説明します。

妊娠中や産後に痔になる原因

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なぜ妊娠中や出産時に痔になることがあるのでしょうか?妊娠すると、母体の血液の量は妊娠前の1約.2倍に増えます。この変化は妊娠初期から始まります。今後胎盤に流れる血液を準備するために、からだが水分を蓄え始めるからです。

血液の量が増えた結果何が起こるかというと、まず心臓に負担がかかります。いつもより心拍数が早くなったり、少しの運動で動悸がしたりするようになります。

また、心臓がからだの隅々まで送った血液をまた心臓に戻すために、からだの静脈にも負担がかかります。静脈血は、静脈の内部にある弁のようなもので上に押し上げられて、心臓まで戻っていきます。

しかし妊娠により血液が増えたことによって、戻しきれなくなった静脈血がこぶのようにふくれて溜まってしまうことがあります。これを静脈瘤と呼びます。

このようにして肛門付近にできた静脈瘤が、いぼ痔の正体です。つまり、妊娠そのものがいぼ痔になるリスクを高めてしまうのです。これは、残念ながら防ぎようがありません。

妊娠中に痔になっている可能性も

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更に、妊娠により、からだに水分を蓄えようとする働きが、便秘も引き起こすことがあります。そして、便秘によって更に静脈が圧迫され、静脈瘤(いぼ痔)ができやすくなってしまいます。

便秘になると便通の際にいきむことが多くなり、これがさらにいぼ痔を大きくしたり、切れ痔の原因になったりします。こうして徐々に大きくなったいぼ痔が、出産のいきみでさらに大きくなる場合があります。

出産時には肛門がかなり開いて、内側がめくれて出て来るような状態になるので、出産後にいぼ痔が肛門から飛び出して戻らなくなることもあります。

いぼ痔が飛び出したことによって、出産時に痔になったと思いがちですが、実は多くの場合、妊娠中からあった痔が出産によって外に飛び出してしまうと言われています。

もちろん出産したらみんな肛門から痔が飛び出してしまうのかというと、もちろんそんなことはありません。個人差がありますし、ほどんどの場合はきれいに治ります。後ほど、予防法や手入れ法を詳しくご紹介していきましょう。

痔の症状

切れ痔(裂肛)

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切れ痔(裂肛)は歯状線の下側、つまり肛門の皮膚にできるため、排便時に痛みを伴います。また、出血することもありますが、量は多くありません。時々かゆみを伴うこともあります。

妊娠に伴う便秘によって切れ痔になることはありますが、妊娠自体が切れ痔を誘発するということはありません。

ごく稀に、先天的に肛門が狭い場合などに慢性的な切れ痔になることがありますが、これは手術で治す必要があります。

いぼ痔(痔核)

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歯状線の上側のいぼ痔(内痔核)は痛みを伴いません。かゆみもないので、出血しなければ痔があることに気づかない場合もあります。

ただし、排便時にこすれるなどして出血すると、かなりの量が出る場合があり、便器の中が真っ赤になることもあります。

歯状線の下側のいぼ痔(外痔核)は、激しい痛みを伴います。肛門を触るといぼのようなものに触れ、色は赤黒いことが多いです。妊娠よってできやすいのは、痛みを伴わない内痔核です。

出産前から痔の場合

妊娠中にできる予防法 -仕事中は?

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すでに痔がある場合もそうでない場合も、妊娠中の過ごし方は出産後にまで大きな影響を及ぼします。痔の悪化を防ぐために妊娠中にできることは何でしょうか?

先に述べたように、痔の正体は静脈瘤ですから、静脈瘤ができないような生活を送ることが、痔の予防につながります。具体的には、お尻に血が溜まらないようにするということです。

長時間座っていることは、お尻に血が溜まる原因になります。デスクワークの人は、座りっぱなしにならないよう定期的に立って少し歩くなど工夫をしましょう。

長時間立って仕事をしている人も、一時間毎に歩行、もしくは頻繁に足踏みをするなど、足を動かすようにしましょう。

また、骨盤底筋運動は、膣や肛門付近の筋肉を動かすことによって、周辺の静脈も刺激して血の流れを良くします。

出産後のからだの回復を助けるためにとても有効な運動ですから、妊娠中からぜひ始めましょう。通勤中や仕事中、気がついた時に肛門と膣を5秒ほど締める、これを数回繰り返しましょう。

妊娠中にできるにできる予防法 -食事や睡眠は?

また、妊娠中の便秘が原因で痔になることもあります。水分補給は便秘を予防するために有効ですので、妊娠中は特に意識してみましょう。同じ理由で、食物繊維も多く摂りましょう。

つわりで食事がとれない人は、どうしても便秘になりがちですが、少しずつでもドライフルーツなど繊維を多く含むものを摂るように心がけましょう。また夜はできるだけ睡眠を多く取りましょう。横になっている時間が、お尻にもっとも優しい時間です。

出産時に気をつけること -いきみ

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いきむと痔が飛び出るのではないかと心配する方も多いでしょう。出産時のいきみ方については、その病院、産院、医師、助産師の考え方によって大きく違ってきます。

呼吸をしながらいきみを逃すようにすすめるところもあれば、息を止めてしっかりいきむように指導するところもいるでしょう。

どちらにしろ、赤ちゃんが産道を通って出て来る際には、直腸の静脈は圧迫され、肛門は大分広がり、内痔核がある人はそれが大きくなって脱出する可能性が高くなります。

だからといって、出産時は痔や排便や会陰が避けることなどを気にしていては、いきみに集中できずお産が長引くばかりです。そういった雑念は一切振り払って、いきみに集中することが、結果的にお産を早め、痔のリスクも下げることにつながります。

ただし、すでに痔がある場合は、助産師にその旨伝えておくようにしましょう。できるだけお尻に負担のかかりにくい出産介助をしてくれるはずです。

痔の治し方

受診するなら何科?

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妊娠中の痔については、産婦人科の担当医に相談して下さい。妊娠中でも安心して使える薬を処方してくれます。便秘が痔を悪化させている場合には、併せて便秘薬も処方してもらいましょう。

出産後の1ヶ月健診が終わってからの受診は、肛門外科になります。授乳中の場合は診察時にその旨伝えましょう。

市販薬の使用は可能?

妊娠中は、市販薬を使う場合にも必ず事前に医師か助産師に相談しましょう。塗り薬でも血管内に吸収されますから、飲み薬と同様に胎盤を通って胎児に影響する場合もあるからです。

同様に、授乳中の場合は、医師や助産師、薬剤師に相談しましょう。

いつまで痛みが続く?

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痛みを伴う切れ痔や外痔核の場合、お産後のお尻や外陰部のむくみが消失し、会陰の傷の痛みも治まる頃には、痛みはほとんど引いています。おそらく1週間ほどでほとんど痛みは感じなくなるでしょう。

ただし、便秘や下痢をすると再度悪化する場合があるので、便通を整える生活を心がけましょう。

いつ治る?

痛みを伴わない内痔核の場合、大きさにもよりますが完治までには長い時間がかかることもあります。中には、脱出したり引っ込んだりを繰り返しながら、数年かけて徐々に消失する場合もあります。

内痔核が外に飛び出している場合、指でそっと押し戻してあげましょう。常に出ていると血行が阻害されて更に戻りにくくなるので、気づいた時に戻してあげるだけでも治癒が早まります。

その際、爪が伸びていないか十分気をつけて下さい。痔核が破れるとびっくりするほどたくさんの血が出ます。触っても痛くないので、怖がる必要はありません。

手術が必要な場合

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ごく稀なケースですが、内痔核を治療せずに放置していると、痔瘻になってしまうことがあります。痔瘻とは、内痔核が炎症を起こして、そこから細菌が入り込んでお尻にトンネルを作ってしまうことです。

肛門ではないところに穴があき、そこから膿みや便が出ます。これは手術しなければなりません。しかし、栄養状態や衛生環境が良くなった昨今、健康な女性がここまで悪化することは非常にまれです。

一方、切れ痔もあまり慢性化してしまうと薬では治すことができず、手術が必要になる場合があります。

ホームケア

清潔に保つ

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どんな病気にも言えることですが、患部を清潔に保つことはとても大事です。ただし、日に何度もアルコール棉で拭くことは、皮膚を乾燥させ常在菌(からだに良い細菌)をも除去してしまうので、注意が必要です。

排便後には赤ちゃんのお尻ふきのように刺激が少ないもので拭く、毎日必ず入浴する、これだけで十分でしょう。ウォシュレットは、温水が当たることで痛みが出るようなら使用を控えましょう。

痔にならない予防法、対策法

痔を防ぐためには、便通を整えること、そのために食生活を整えることが大切です。食物繊維を多く摂り、こまめな水分補給を心がけましょう。

既に痔がある人は、アルコールや刺激物を控えましょう。アルコールは心拍数を早めますから静脈に負担がかかりますし、刺激物は便に混ざって出る時に痛みを増強させます。

そして大切なのは、痔がある人もない人も、骨盤底筋運動をコツコツと続けることです。特に内痔核が脱出している場合は、指でそっと押し入れてからすぐに肛門を引き締める運動を行うことにより、痔核の脱出がより早く治ります。

体験談

妊娠中から産後にかけて便秘が続き…

okogesanさんからの体験談:
1週間便秘状態が続くのは普通でした。水分が足りないのもあるのか、出そうになっても便が硬く、出すのも苦痛に感じました。

妊娠中は臨月まで続き、出産直後も会陰切開の痛みなどで出すのが困難になり1人目の妊娠の時にはかなり長期間にわたり便秘の状態が続きました。

妊娠初期から産後まで慢性的な便秘に

mssmssmssさんからの体験談:
2日に一回はお通じがありましたが、少しだけ固くなった便が出るだけという感じで、慢性便秘でした。ひどい時には腰痛、下腹部痛があり、お腹も張りやすかったです。便秘は、妊娠初期から産後までずっと続きました。

排便時は血が出るほど切れて辛かった

yuiko22さんからの体験談:
妊娠16週目頃からしつこい便秘になり、産まれるまでずっと続きました。2日くらいでないとお腹が重く、便秘のせいで張りやすくなりました。

産後、便秘から解放されたのも、つかの間、1ヶ月後くらいから授乳量が増えためか便秘へ逆戻りしてしまいましたが、妊娠中よりは気になる感じではありませんでした。ただ、数日に一度どっとでるので、血が出るほど切れてしまい、それが辛かったです。

まとめ

痔は、女性にとっては恥ずかしい病気だと思われやすく、中には誰にも相談できずに悩んでいる方もいるかもしれません。

しかし実は、妊娠中や出産後の女性にはよく見られることで、それは女性のからだが自然に変化することによって起きているのですから、全く恥ずかしいことではないのです。

むしろ立派なお母さんになった証拠だと胸を張って下さい。もちろん予防できればそれが一番良いですが、痔ができてしまっても、恥ずかしがらずに医師や助産師に相談して下さいね。

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