プール熱(咽頭結膜熱)とは?|乳幼児から大人までかかる夏風邪

流行する時期、ピークは?

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プール熱の流行しやすい時期は6月ごろから10月ごろまでですが、プールを多く利用する7月から8月ぐらいが流行のピークだといわれています。

原因とされるアデノウイルスは季節を問わず活動するので、冬でも温水プールなどを介して流行することがあるようです。

アデノウイルスによる似た病気として、流行性角結膜炎(はやり目)があります。おもにアデノウイルス8型によるもので、目の症状はほとんど同じですが、咽頭結膜熱とちがい高熱やのどの症状はそれほどでません。

感染力について

プール熱の感染経路は主に以下の2つと言われています。

・咳やくしゃみでつばが飛ぶことによりうつる飛沫感染
・ウイルスで汚染されたものを介してうつる接触感染(プールでの感染も含みます。)

感染力がとても強いので、プールに入っていない大人でも看病している子どもからウイルスをもらってしまうことがあります。

このため家族に1人発症がわかった時点で、他の家族に感染しないように対処する必要があります。

プールとの関係は?プールに入る時に気をつけることはある?

プール熱という名前がついていますが、プールとは何の関係があるのでしょうか?

プールの水や、使ったタオルがアデノウイルスで汚染され、それを介して感染することから、その名が付けられていると言われています。最近は温水プールも多くなってきているので、夏だけでなく冬にかかる人もいるようです。

プールに入るときはゴーグルを使い、前後に目を洗い、清潔なタオルを他人と共用しないように注意しましょう。またせっけんを使った手洗い・うがいを習慣化すれば予防に効果的です。

何度も感染するの?

アデノウイルスは約50種類と多く、プール熱に関係するものだけでも数種類あります。いったん治っても、また別のアデノウイルスによってプール熱にかかることもあるのです。

また、アデノウイルスは免疫がつきにくいウイルスです。そのため、一度かかっていても何度も感染してしまう恐れがあるので注意が必要です。

プール熱の症状|乳幼児は嘔吐や下痢も。経過や潜伏期間は?

主な症状は咽頭炎、結膜炎、高熱

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咽頭結膜熱という名の通り

・のどの痛み、腫れ
・結膜(白目)が充血し目やにが出る
・高熱(40℃前後)、首のリンパ節の腫れ

が三大症状といわれます。すべての症状が出るとは限らず、1つしか症状が出ない場合もあります。また、時には下痢や嘔吐をおこすことも。これらの症状が3日~7日ほど続きます。

急な発熱にはじまり、のどの痛みによる食欲不振に加えて、目が赤く涙や目ヤニがでることが特徴です。目の症状はまず片方の目に出て、その後もう片方に出るということが多いようです。

発症期間

症状には個人差がありますが、3日から7日ほど症状が続くといわれています。

潜伏期間

アデノウイルスに感染してから症状が出てくるまで、5日から7日ほどかかります。やっかいなことに、その間も感染力があるので、治ってからも便からは1ヶ月ほどウイルスが排出されます。

家族内に感染者がいるとわかった時点で、「他の家族へすでに感染しているかも!」「今から予防して間に合うのか?」なんて思いがよぎると思います。

我が家は家族内に感染者が出たとき、主人も病院勤務のため自宅待機の指示が出ました。主人も数日後に発症し大変でしたが、職場に感染者を出さなかったことが救いでした。

年齢による症状のちがい

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一般的に、大人は子どもよりも症状は軽くすむことが多いようですが、子どもと比べるとのどの症状が強く出ることが多いようです。

のどの痛みが強いと水分をとりづらくなるので、脱水状態にならないように注意しなければいけません。乳幼児の場合は下痢や嘔吐といった症状が目立ち、目の症状が出ないこともあります。

風邪、川崎病、溶連菌感染症の症状との違い

風邪とプール熱は症状が似ています。プール熱の目の症状が軽かったり、出なかった場合はただの風邪と思ってしまうかもしれません。

プール熱、川崎病、溶連菌感染症は特に症状が似ています。これらの症状に共通するものは次の通りです。

・高熱
・首のリンパ節の腫れ
・発疹
・イチゴ舌(舌が腫れ、ぷつぷつ赤くなる)
・首のリンパ節の腫れ
・手足のむくみ

症状の出方は人それぞれなので、見た目で判断するのは難しいです。これらは発症する原因が異なるため、治療法も違います。

細菌(バイキン)が原因となる溶連菌感染症には抗生剤が効きますが、川崎病とプール熱はウイルスによるものなので抗生剤などの薬が効きません。

一般的な風邪、溶連菌感染症、プール熱はある程度日にちが経てば症状は軽くなっていきますが、川崎病は5日以上高熱が続き、新たな症状が出てきます。

川崎病は発見・治療が遅れると心臓の血管に異常をおこし、命にかかわる可能性がある病気です。一度受診していても数日間様子を見ていておかしいと思ったら再度受診しましょう。

このように症状が似ている病気がいくつかあるので、綿棒でのどや鼻の粘膜をぬぐう検査でどの病気なのかを判断します。

この検査で細菌によるものなのか、ウイルスによるものなのかを調べていてどういう薬や対処が必要なのかを決めることができます。子どもの体調がおかしいと思った時には、まず医師に相談してみましょう。

感染しても症状が出ないことも

プール熱の症状は上記で説明した三大症状がそろって発症することもあれば、そのうち1つだけの場合もあります。

まわりで流行っている時には、症状が1つであってもよく経過を観察しておいた方が良いでしょう。

プール熱の原因|免疫はつくの?

アデノウイルスとの関係

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プール熱の原因はアデノウイルスです。アデノウイルスには2、3、4、7、11型など多くの種類があります。その中でも3型、4型、7型による感染が多いです。(8型は流行性角結膜炎の原因です)。

このアデノウイルスが、飛沫感染やプールの水を介すなどの接触感染をすることでプール熱が引き起こされます。

約50種類あるアデノウイルス。1度かかったプール熱の原因のウイルスの免疫はついても、別の種類のウイルスの免疫はつきません。

そのため再度プール熱にかかることもあるのです。かかったことがあっても油断せず、日頃から手洗いやうがい、プールに入った時は目の洗浄などを心がけましょう。

プール熱(咽頭結膜熱)の治療法

検査方法

症状からプール熱の可能性が疑われた場合は、主に迅速検査が行われます。のどの粘膜を検査専用の綿棒でこすりウイルスをチェックするという方法で、30分ほどで結果がわかります。

もう一つの検査方法として血液検査がありますが、結果が出るまで数日かかります。そのため、結果が出る頃には症状が落ち着いていることが多いです。

もう一度採血をして抗体の数値を比較し、やはり原因はアデノウイルスであったと確認することが目的の場合が多いでしょう。

治療法

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ウイルスと呼ばれるものに特効薬はなく、対症療法(症状をやわらげる)しかありません。

・熱が高ければ解熱剤
・のどが痛ければ鎮痛剤
・目の症状には炎症をやわらげる目薬
・充血したところから新たな細菌感染を予防するための抗生剤の目薬

このようにウイルスをやっつける目的ではなく、症状をやわらげるために薬が処方されます。

合併症

まれに重症化すると気管支炎や肺炎をおこしてしまうことがあります。様子を見ていてもなかなか良くならない、もっと悪くなった等気になる時はまず病院に相談してみましょう。

アデノウイルス7型が原因の場合は、乳幼児が感染していると肺炎の症状が重症化しやすいようです。

ホームケア

熱のケア

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子どもの熱、特に赤ちゃんの熱のケアは難しいですよね。熱いのか寒いのか判断がつかなかったり、冷やして良いものか心配になることもあります。

小児科で「できるだけ解熱剤は使わないで、お子さんの体が自分で熱を上げて体の中の悪いものをやっつけているんですよ」と言われたことありませんか?

あれは解熱剤を使っていったん熱を下げても、原因となるものはまだ体内で生き残っているために薬が切れたらまた同じように熱が上がってしまうということなんです。

かといって40℃を越えるような熱や、そこまで上がっていなくてもぐったりしている場合は医師に処方された解熱剤を使ってくださいね。

また、暑がるときは冷やし寒がるときは温める。汗をかいたらまめに着替えて、水分も気を付けてとるようにしましょう。

解熱剤を使ったあとは特に汗をたくさんかきやすくなるので、背中や胸、おなかのあたりにタオルをいれて時々交換すると良いですよ。

頭を冷やすのは熱を下げるのにはあまり効果はありませんが、頭痛があるときは楽になるようです。熱を下げる目的で冷やすなら、わきの下や足の付け根(触って脈打っていることがわかる箇所)を冷やすと効果的です。熱を測る時は正しく測れるようにクーリングははずして測りましょう。

水分補給

熱が出る時は、水分を充分にとる必要があります。汗や息の中に含まれる水分が平熱時よりも多く出ていくために脱水になりやすいです。そうなるとまた熱が上がり、悪循環となってしまいます。

脱水傾向になると口の中や唇が乾いてくる、おしっこがあまり出ないといった症状が出ます。のどの痛みで飲み込みにくい時や、起きるのも辛い時には小さな氷片を口にふくませるといいですよ。

筆者は子どもが熱を出した時、スポーツドリンクを100円ショップの小さい氷をつくるトレーで凍らせて時々口にふくませています。

温かいものは炎症を悪化させるので、のどの痛みが強い時には熱い物はさけ冷たい飲み物をあげてくださいね。

食事、授乳

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熱やのどの痛みが強い間は

・熱い物
・固形物
・ソースやしょうゆ等味が濃いもの
・すっぱいもの

これらのものは刺激が強いのでさけましょう。

おすすめは

・水分多めのおかゆ
・冷たいそうめん、うどん
・冷ましたポタージュスープ
・ゼリー、ヨーグルト

など、のどごしの良いさっぱりとしたものです。

早く元気になってほしいとあれこれ食べてほしいところですが、のどが痛い時は水分をしっかり取ることが一番大事です。無理せず食べたいものをとれるようにしてあげましょう。

離乳期の赤ちゃんは具合が悪い時はとくに抱っこ、おっぱいを欲しがりますよね。せっかく離乳食や離乳が進んできたのに…と思うかもしれませんが、食事や水分がとれない時は、無理せずおっぱいをあげてください。

症状が落ち着いてからまた離乳食をあげましょう。母乳を飲ませるときは赤ちゃんの涙や目やにがママの服につきやすいので注意しましょう。

お風呂

プール熱はお風呂でもうつる可能性があります。顔をつけなければ大丈夫かも?タオルを別にすれば大丈夫なのでは?と思うかもしれません。

ところが、原因となるアデノウイルスは1ヶ月くらいは便にも含まれるので、もし便のふき取りが不十分なまま湯船に入ってしまうと家族に感染してしまうこともあります。

基本的に、熱がある時は入浴するだけでも体力を使うのでシャワーでさっとすませるほうがいいでしょう。もしどうしても湯船に入りたければ一番最後に入り、入浴後はきれいに浴室を洗い流しましょう。

汗をかいたときはお湯で絞ったタオルで体をふいてあげるとさっぱりしますよ。あらかじめお湯をポットに入れておいて、必要な時に洗面器で水でうすめて使うと楽チンです。

感染症予防

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(1)石けんを使った手洗い・うがいをまめにしましょう。手洗いができない場合は消毒ジェルなども効果的です。

(2)マスク、換気をしましょう。(飛沫感染をふせぎます)

(3)ウイルスがついていると思われる場所を消毒しましょう。また、ウイルスを排出している場所を触る時には直接触らないようにしましょう。
→具体的には目を触らない、目やにを拭くときは手に付かないようにティッシュを使いすぐ捨てる。その都度使い捨てできるペーパータオルを使うか、タオルは個別のものを使う。

→消毒は消毒用エタノールや、ウイルスに効くと販売されているスプレー(次亜塩素酸ナトリウム)を使用する。

(4)洗濯物は感染者と分けて洗う。

(5)おむつを替えるときは手袋を使い、汚れたものは袋にまとめて捨てる。

こういったことが必要です。大人だとそれぞれ気を付けることができますが、子どもが小さいとなかなか難しいですよね。

我が家でも下の子がプール熱に感染した時はあっという間に両親にうつり、なぜか奇跡的に長男にはうつりませんでした。おそらく長男はいつも一番風呂に入っていたので、潜伏期間をうまく乗り越えられたのではないかと思います。

長男にうつしてなるものかと家のあちこちを消毒し、毎日寝具を洗濯し、寝ている子の目やにが固まらないうちにそーっと拭いたりして家庭内感染を阻止しました。

登園、登校、外出の目安

プール熱は「学校伝染病第2種」に指定されている伝染病で、出席停止の指示を受けたらすぐに園・学校に届けを出し、決められた期間を休まなければいけません。

これは法律で決められています。すぐに届けを出すのは、他の生徒への感染を防ぐために大切なことです。

登園、登校の許可が下りるのは主な症状が収まって2日過ぎてからです。注意しなければいけないのは、登園、登校の許可を得られた=プールOKということではありません。

症状がおさまったあともウイルスの排出は続きます。プールは医師の許可がでるまでお休みしましょう。

専門機関へのご相談はこちら

※夜間休日、お子さまの健康状態に心配なことがある場合や受診の目安に迷った場合は子ども医療電話相談♯8000に相談をおすすめします。

厚生労働省・子ども医療電話相談事業
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/10/tp1010-3.html

まとめ

プール熱はとてもうつりやすい病気です。日ごろから手洗い・うがいを習慣づけておくこと、予防に関する知識をつけておくことが大切になります。もし発症してもきちんと対処すれば数日で回復するので、まずは落ち着いて受診しましょう。

「手洗い、うがいをしてきなさい!」ではなかなか動いてくれないことも多いですが、「ママの手にあわあわを出してくれる?」「洗面所にむかってよーい、どん!」と一緒になって取り組むと進んでやるかもしれません。

また、うがいは放っておくとガラガラ•••ではなく、ガラ・ぺっと一瞬で終わってしまうので、スーパーカー好きの息子たちにはポルシェやフェラーリのエンジン音にうがいを例えてみたりと、できるだけしっかりうがいしつつ楽しめるように工夫しています。

子どもと楽しみながら予防して楽しい夏をすごしましょう。

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