不妊治療とは|原因不明不妊・男性不妊・女性不妊などへの対処法

不妊治療の種類と方法

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不妊治療には、一般不妊治療と呼ばれる「タイミング法」「人工授精」、そして高度生殖医療と呼ばれる「体外授精」などがあります。患者さんの年齢や不妊の原因により、その対処法が異なります。

ある程度高齢である場合や、男性不妊・女性不妊など「不妊」の原因が明確である場合には、第二段階である人工授精、そして第三段階である「体外授精」へとステップアップする治療法から行うケースがほとんどです。

タイミング法

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不妊治療を行う場合、まず勧められるのが「タイミング法」です。妊娠に至るには、卵子と精子が結びつき授精することが必須です。

しかし卵子は排卵後24時間しか生きられず、また精子も平均2~3日しか生きられないため、その出会いの瞬間をきちんと見極めることが大切です。

そのため、排卵に合わせて夫婦生活を持つことで、妊娠の確率を上げようとするのが、この“タイミング法”です。

タイミング法は、毎日基礎体温を測ることにより、自身の生理周期を確認することから始められます。女性の身体には、低温期・高温期と呼ばれる体温の変化があり、低温期から高温期へと移行するタイミングで排卵が行わるため、この排卵日を狙って夫婦生活を持つことが重要です。

タイミング法の場合、特に病院には行かず、自身で基礎体温を測り、また排卵日検査薬を用いて排卵日を予測しながら性交渉を持つこともできます。

病院にてきちんと不妊治療を行う場合、排卵日前に血液検査を行いホルモンの状態をチェックする、また卵胞の大きさを確認した上で排卵日を予測するなど、更に高度な治療を受けられるメリットがあります。

また、排卵がきちんと行われていない場合、排卵促進剤を使用したり、卵胞を育てるための注射を打ったりするなどの治療を行う場合もあります。

人工授精(AIH)

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人工授精とは、一言で言うと、子宮内に直接精子を注入する方法です。パートナーに、自宅、もしくは病院内で精子を採取してもらい、その精子を女性の子宮内に直接注入することで、妊娠の可能性を上げることが出来ます。

昔は、採取した精子をそのまま子宮に送り込んでいましたが、現在では濃度こうばいと呼ばれる方法で、良質な精子のみを回収する方法などが採られています。

また人工授精の際にも、上記“タイミング法”と同じく、排卵日の測定を行います。いかに排卵のタイミングに合わせて人工授精が行えるかが妊娠の確率を左右するため、排卵誘発剤などを用いることもあります。

体外授精

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その名の通り、女性の卵子、男性の精子をそれぞれ採取し、体外で授精を行う不妊治療方法です。授精した授精卵は再び子宮に戻され、そのまま着床を促すことになります。

採卵に痛みを伴うこと、また費用が高額なことから、一般不妊治療に比べ敷居が高いといえるでしょう。しかしながら、妊娠の確立は最も高い方法だとも言えるかもしれません。

人工授精のメリット

人工授精を勧められる場合とは

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女性不妊や男性不妊の原因によっては、この距離を縮める(バイパスする)ことで、妊娠の確率を高めることができると言われています。そのため人工授精は、下記のような不妊理由がある場合、非常に有効的です。

タイミング法を半年~1年経っても妊娠に至らない場合は、次なるステップとして人工授精を勧められるケースが多いようです。

子宮頚管粘液分泌不全

女性の身体は、排卵が近づくと子宮頚管粘液が増加します。これは子宮内へ精子を受け入れやすくするための作用です。

しかし子宮頚管粘液が不十分で、精子を子宮内に取り入れにくいというケースもあり、この場合人工授精を行うことで精子と卵子の距離を縮め、妊娠を可能にすることができます。

性機能障害

主に男性側に性機能障害がある場合、人工授精は非常に有効と言われています。

フーナーテスト(ヒューナーテスト)の結果、運動率が悪い場合

不妊治療の過程で、フーナー(ヒューナー)テストという検査を受けることがあります。これは、性交した後の頚管粘液を調べることで、子宮内の精子の運動率を測るものです。万が一、この結果が良くなかった場合、子宮の環境と精子の相性が良くないということになります。

抗精子抗体がある場合

女性の体内に、パートナーの精子に対する抗体(抗精子抗体)ができてしまうケースがあります。これができてしまうと、女性の身体はパートナーの精子を異物と認識するため、これを排除しようと働きかけるようです。

この反応は膣内で行われるため、膣内より更に奥にある子宮に直接精子を注入する人工授精は、非常に有効的な方法と言われています。なお、抗精子抗体は血液検査により分かるようです。

費用面

男性不妊・女性不妊など、不妊に何らかの原因がある場合は大きなメリットがありますが、人工授精の費用はクリニックにもよりますが約1~3万円程度であり、その次のステップである「体外授精」に比べると、非常に安価なことも大きなメリットだといえるでしょう。

人工授精のデメリット

排卵誘発剤(ゴナールエフ)の使用による腹痛、腹水などの弊害

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残念ながら、人工授精にもデメリットはあります。その一つが、排卵がきちんと出来ていない場合に使用するゴナールエフと言う皮下注射の副作用です。

不妊治療に使用される排卵誘発剤の一種がゴナールエフ皮下注射で、主に、無排卵の治療に用いられます。

人工授精を行う場合にも、排卵障害や多膿性卵巣症候群などの女性不妊の原因がある場合、ゴナールエフ皮下注射が使用されますが、この注射にはいくつかの副作用があります。

その一つが、卵巣過剰刺激症候群と呼ばれるものです。ゴナールエフ皮下注射が与える卵巣への刺激が強すぎる場合、下腹部に痛みを覚えたり、腹水がたまったりするなどの弊害が生まれます。

人工授精の方法、進め方

【1】基礎体温で排卵日を予測する

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タイミング法と同様、排卵日を予測するため、基礎体温を調べます。排卵に障害が見られる場合は、排卵誘発剤を使用、またゴーナルエフ皮下注射と呼ばれる卵胞を育てるための治療を行うこともあります。その後、卵胞チェック、血液検査によるホルモンチェックを行い、排卵日を特定します。

※病院によっては、人工授精の前に、卵管の詰まりをチェックするための卵管造影検査を行うケースもあります。この検査を行うと、卵管の詰まりを除去することが出来るため、妊娠の確率が上がるとも言われています。

【2】排卵日当日の朝に、パートナーの精子を採取する

自宅、もしくは病院内で行います。(長い間採取した精子を放置しておくと運動率が低下するため、病院へは2時間以内に持ち込むことが求められます)。

【3】採取した精子の洗浄濃縮処理を行う

感染防止のため、精子を洗浄濃縮し、運動率の高い元気な精子だけを選別します。

【4】人工授精を行う

細いチューブを使用し、子宮に直接精子を注入します。精子がきちんと送り込まれるまで、暫くベッドの上で待機します。

【5】排卵確認を行う

翌日再度病院に行き、排卵されているかどうか確認を行います。

人工授精で妊娠する確率・流産の可能性

数字で見る妊娠する確率

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それでは、実際に人工授精を行った場合、妊娠する確率はどの程度なのでしょうか?一般的に自然妊娠の確率が約20%といわれているのに比べ、人工授精による妊娠の確率は約5~10%程度といわれています(※年齢や身体の状況により変動はあります)。

また、人工授精による流産の可能性が高まることはありません。通常の妊娠と同じように、流産にも障害にも同等のリスクがあるといえるでしょう。

体外受精に進むタイミング

人工授精の回数で考えてみる

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5~6回人工授精を行っても妊娠に至らない場合は、次のステップである「体外授精」を考え始めるケースが多いようです。しかしながら、体外受精へと進まなければ妊娠できないというわけではありません。

人工授精が行える回数は決まっておらず、何回でも受ける事が出来ますし、一度体外受精へとステップアップした後、再び人工授精へとステップダウンすることも可能なのです。

人工授精は6回を過ぎると妊娠の確率が減るというデータもあるようですが、実際は6回以上チャレンジする人が少ない為、正しいデータが算出できていないという考えもあるようです。

まとめ

人工授精の方法、メリット・デメリットなどについて解説いたしました。「妊娠したい」とは思っていても、高額なのではないか、痛みを伴うのではないかといった、不妊治療に対するさまざまなイメージから、なかなかその一歩を踏み出せないという人もいることでしょう。

しかし、人工授精は極めて自然妊娠に近い不妊治療方法であることがお分かりになったことかと思います。
「タイミング法」を試したけれどなかなか上手くいかないと悩んでいる方は、ぜひ一度ご夫婦で相談されてみてはいかがでしょうか?

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