高齢出産の母体へのリスク
(1)妊娠率の低下

まず、高齢出産のリスクとして1番始めに挙げられるのが妊娠率の低下です。 年齢が上がれば上がるほど、卵巣の老化が始まります。
女性は生まれた時から既に排卵が始まっており、生涯の中で排卵できる卵子は約500個程度とされています。
そのなかでも、卵子の元となる卵母細胞は20歳代で10万個以下となるのに対し、40歳代では5000個以下となるのです。
そのため、高齢になればなるほど、卵巣の老化も相まって、良質な卵子を排卵することが難しくなってきます。さらに、女性ホルモンの分泌は30歳代までは上昇しているものの、その後は低下の一途を辿ります。
これらのことから、高齢での妊娠率は低くなる傾向にあります。
高齢出産の胎児へのリスク
ダウン症などの染色体異常を持って生まれる確率は?

高齢出産により、胎児に与える影響として、最も言われていることが、染色体異常児誕生のリスクです。染色体異常児とはなかなか聞きなれない言葉ですが、ダウン症というとピンとくるかと思います。
つまり、ダウン症を含む障害を持った子どもが生まれるリスクが高まるというのが、この染色体異常児誕生のリスクということになります。原因の一つとしては、卵子および精子の老化によるものです。
染色体異常が起こった場合、約80%が母親由来、約20%が父親由来とされていることから、母親の卵子の老化がおおいに関係しているといえます。
ダウン症の発症率は、20歳代の出産では1,000人に1人以下ですが、40歳代では1,000人中10人とされており、高齢出産であればあるほど、染色体異常児のリスクが高いことが伺えます。
出生前診断の検査内容
出生前診断を受けるメリットデメリット

前述したように、高齢出産であるが故の心配事としては、やはり染色体異常児すなわち、胎児への影響となるのではないでしょうか。
胎児の染色体異常を出生前に知る方法として、2013年より「新型出生前診断(NIPT)」というものが始まりました。これは、妊婦の血液から胎児の染色体異常の可能性が分かるというものです。
検査は妊娠22週までの妊婦が対象となります。また、この検査以外にも「トリプルマーカー」といい、同じく血液検査で胎児の染色体異常を測ることができます。どちらの検査とも検査代は自己負担となります。
また、検査を受けるからには、当然自分にとってのメリットデメリットが重要となりますね。
まずはメリットからご紹介します。
出生前に判定が出ることから、出生後に知るよりもある程度の心構えをすることはできるかと思います。また、血液検査であるため、母体への負担も軽いです。
次にデメリットです。
この検査にて陽性反応が出てしまった場合、確定を望む場合には羊水検査を受けなければなりません。しかし羊水検査は流産のリスクを伴います。
また、羊水検査でも陽性反応が出た際、産むのか、産まないのかという判断を迫られることとなります。
卵子の老化、保存
卵子を保存して老化に備える?

「卵子凍結」という言葉をご存知でしょうか。2014年に、13年前に凍結した卵子で30歳で出産した女性のニュースが取り上げられました。
卵子凍結とは、卵巣から未受精の卵子を凍結することで、必要な際に相手の精子と受精させ、子宮に戻して妊娠させることができます。
日本では若い女性のがん治療の際に卵子を凍結保存しておくなど、疾患治療の前に保存するという例が多いとのことです。
日本では、40歳以上での卵子採取および、45歳以上での凍結卵子の使用は推奨しておらず、また、40歳前後での凍結卵子を使用した出産成功率はかなり低くなっています。
したがって、凍結卵子を使用しても高齢出産では法的にも、体的にもリスクを伴うといえます。
不妊治療とは
タイミング療法や人工授精など…金銭援助を受けられる?

最近、芸能人で不妊治療を行って我が子を授かったという情報がネット上やテレビの特集等で紹介されているため、言葉を聞いたことある方も多いかと思います。
不妊症とは、妊娠を希望し、避妊をせず1年間性生活を送っているにも関わらずに妊娠が成立しない状態をいいます。不妊の原因には女性側の原因では子宮、卵巣の異常、男性では生殖器の障害が主に挙げられます。
検査にて不妊症と診断された場合、治療としてはタイミング療法といい、検査をしながら性交渉を測る方法、子宮の障害を治すための手術、人工授精があります。
不妊治療は自由診療内で行うため、かなりの費用がかかります。そのため、金銭的な理由から、治療を踏み止まるカップルも多いのが現状です。
しかし、意外と知られていない事実ですが、特定不妊治療費助成事業といい、不妊治療に対して助成金を受け取ることができます。助成を受けられる人は下記の条件をすべて満たす必要があります。
①夫婦少なくとも1名が国内に居住かつ居住している方が所得が多いこと
②治療開始時点で法律上の婚姻をしている
③体外受精、顕微授精以外の治療法で妊娠の見込みがない又は極めて少ないと判断される
④指定医療機関で治療を受けている
⑤夫婦の所得の合計が730万円未満であること
助成回数は助成年度や女性の年齢で異なります。また、治療によって助成金は異なる上に、自治体独自の支援もある場合があるため、まずは市区町村に問い合わせてみるといいかと思います。
先の見えない不妊治療の末…
shunmamaさんからの体験談:
子どもを授かりたかったのですが、なかなかできなくて、不妊治療専門医院に通院し、体外受精三回目で、陽性判定をいただきました。体外受精でしたので、妊娠5周の採血の数値で、妊娠がわかりました。
検査をしても、夫婦共に、これといった不妊原因は、分からずに、三年ほど通院した頃でした。ずっと待ち望んでいたので、一緒に喜びました。病院の先生も喜んでくれました。先の見えない治療をどこまで続けたらいいのか悩んだり、治療を休みたいとまで思ったりもしたので、本当に授かった時は、うれしかったです。
まとめ
これから子どもを授かりたいと思っているママにとって、何歳からが高齢出産に当たるのかということはとても気になることだと思います。
母体にも、子どもへもそれなりのリスクがある高齢出産です。医療の進歩や法の改正から以前よりも不妊治療へもチャレンジしやすくなっているのが現状です。
しかし、子どもを産むことがゴールではなく、その先には育児という子どもを産むことよりも何よりも大きな壁が待っています。
その壁を乗り越えられるよう、ご自分の体力や、高齢出産のメリットである精神力、経済力と相談して家族計画を立てて頂きたいと思います。
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