誘発分娩とは?卵膜剥離、ラミナリア、メトロ、促進剤など
卵膜剥離
卵膜剥離は、赤ちゃんを包んでいる卵膜を直接指で子宮から少し剥がすことです。この刺激によって、子宮口が開いたり陣痛が促進されたりします。
ラミナリア
乾燥した海藻でできた棒のような器具です。子宮頸管に入れ、子宮頸管からの分泌液で膨張させて子宮口を開いていきます。
バルーン(メトロイリンテル)
メトロイリンテルという風船のように膨らむ医療器具は、「メトロ」「バルーン」と呼ばれています。
バルーンが膨らむことにより子宮口が広がり、分娩を促進する処置です。
陣痛促進剤
陣痛を促進するお薬で、プロスタグランジン(飲み薬や点滴)とオキシトシン(点滴のみ)があります。プロスタグランジンには子宮口をやわらかくする働きがありますので、お産が始まる傾向がない場合に特に有効です。
様子をみながら、少量ずつ使っていきます。飲み薬の場合は、1時間に1錠ずつ飲んでいきます。点滴の場合は、20~30分を目安に少しずつ量を増やしていきます。
バルーンだけで陣痛を起こす場合もあれば、陣痛促進剤がなかなか効かないときにバルーンを使う場合もあります。また、子宮口が4~5cm開いてバルーンが外れても陣痛がこない場合は、陣痛促進剤を使うことがあります。
バルーン出産って?
子宮口を広げ陣痛・出産を促す

バルーンとは誘発分娩で行われる処置の1つで、正式にはメトロイリンテルといい、メトロと略していわれることもあります。子宮口を開く器具で、風船のようなかたちをしています。バルーンには何種類かサイズがあり、子宮口の開き具合によって使い分けられます。
バルーンを使うには、子宮口が2cm開いている、臍帯下垂(子宮口と赤ちゃんの間にへその緒が下がってきてしまうこと)ではない、などの条件を満たしていなければなりません。
そのため、子宮口は少し開いていても陣痛が弱くてお産がなかなか進まない場合などに使われることが多いようです。
また、逆子の場合などにも使われます。子宮口が十分に開いていないとへその緒が圧迫されて赤ちゃんが酸欠になる恐れがありますので、バルーンを使って子宮口をしっかりと開かせるのです。
無痛分娩で使用するケースも
分娩時に麻酔を使って痛みを和らげる無痛分娩でも、バルーンを使用することがあります。というのも、陣痛がきてから無痛分娩の準備をしていては間に合わないことがあるからです。
そのため、出産予定日を決めて出産する計画分娩を行う場合は、バルーンを使って分娩につなげていくのです。この場合も子宮口の開き具合や陣痛の様子によっては、バルーンの他に陣痛促進剤を使うこともあります。
バルーン出産の手順

まずは、子宮口が2cm以上開いているか、臍帯下垂ではないか、の確認を行います。これらの条件を満たしていれば、バルーンが使用できます。
なお、バルーン使用中はモニタリングを行い、妊婦さんや赤ちゃんの様子を常にチェックしながらお産を進めていきます。
バルーンはしぼんだ状態で子宮腔内に入れます。挿入自体は1分ほどで終わります。その後、様子をみながらバルーンの中に徐々に滅菌蒸留水を注入していきます。
バルーンを入れると子宮内圧が上がります。バルーンに滅菌蒸留水を入れるとバルーンが膨らみます。これらによって子宮筋が刺激されて、陣痛が起こったり促進されたりします。
また、子宮筋を刺激するとプロスタグランジンというホルモンが分泌されます。これによっても陣痛が起こったり促進されたり、子宮口もやわらかくなります。
こうして子宮口が4~5cmほどに開いていくと、バルーンは自然に外れます。この頃には陣痛がきていることが多いです。その場合は、そのまま子宮口が全開になるのを待ち、分娩となります。
ただし、陣痛がこなかったり弱かったりする場合は、陣痛促進剤を使用します。それでもお産が進まず、赤ちゃんの状態から必要だと判断された場合は、帝王切開になることもあります。
痛みは?出血は?
どんな痛み?タイミングは?

子宮口が2cm以上開いた状態で挿入しますので、挿入時はそれほど痛みを感じることはないようです。また、バルーンを入れてしまうと痛みは感じないといわれています。
ただ、バルーンを入れている間、圧迫感や違和感があったという方は多いようです。一方で陣痛が始まっている場合などは、バルーンを使っていることにすら気付かなかったという方も少なくないようです。
子宮口が開いてくると、バルーンは自然に外れます。体外に出てくることもあれば、そのまま子宮の中にとどまっていることもあります。どちらにしても、外れる時は痛みがほとんどありません。バルーンが子宮の中にとどまっている場合は、バルーンが外れたことに気がつかない方も多いようです。
出血を伴うことも
バルーンを入れた後に出血がみられることがあります。出血は少量であることが多いですが、体内に傷がついたときなどは大量にみられる場合もあります。量が多くて不安なときは看護師さんに伝えましょう。
時間について
経産婦の方が早くお産がすすむ場合も

個人差もありますので、バルーンを入れてから陣痛がくるまでの時間や、子宮口が開いていくペースはバラバラのようです。
ただ、バルーンを入れてから24時間以内には産まれることが多いです。また、経産婦さんの方が初産婦さんよりも早くお産が進む傾向があります。
費用について メリット・デメリット、リスクは?
メリット

誘発分娩は、自然分娩と比べて分娩にかかる時間が短いといわれています。そのため、妊婦さんはもちろん赤ちゃんにとっても比較的体への負担が軽いです。また分娩にかかる時間が短いと、そのぶん出血量も少なく抑えられるというメリットもあります。
また計画出産の場合は、出産予定日が決まっていますので、陣痛がきてから急いで病院へ向かう、ということはありません。そのため、病院以外で破水してしまったり、病院に着く前に産まれたり、といったことを防ぐことができます。
デメリット・リスク

・胎位の変化
バルーンによって赤ちゃんの頭が押し上げられてしまい、赤ちゃんの位置や体勢が変わってしまうことがあります。これによって出産が困難になったり、赤ちゃんより先にへその緒が出てしまって赤ちゃんが酸欠状態になったりすることがあります。
・頸管裂傷・子宮破裂
バルーンを入れる時に体内に傷がついてしまったり、バルーンを入れることで子宮の内圧が急に上がったりします。これにより、頸管裂傷や子宮破裂などのリスクが高まります。
・細菌感染
バルーン挿入時に細菌に感染する可能性があります。ただ、挿入前に抗生物質が処方されることもあります。
・分娩に長時間かかることも
バルーンは強制的に陣痛を起こします。そのため、産道が開く準備ができていないうちに使ってしまうと、出産できるようになるまで長時間痛みを我慢しなければならない場合があります。
・費用
分娩にかかる費用は、自然分娩と比べて高くなります。
まとめ
妊婦さんによっては、予定日を過ぎてもなかなか産気づかなかったり、分娩に長時間かかってしまうこともあります。バルーン出産というと何となく怖いイメージをもたれるかもしれませんが、妊婦さんや赤ちゃんをサポートしてくれるお助けアイテムです。
予定日から大きく遅れた場合や、陣痛がなかなかつかない時の場合に備えて、バルーン出産について事前に知っておくと、リラックスして出産に臨めるでしょう。(文章作成:米奉行)
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