腹痛の症状と種類(心配のない痛み)
37週以降の、おなかの張りによる痛み

妊娠時以外の「おなかが張る」は腹部の膨満感を指しますが、妊娠中は子宮収縮のことを指します。
「膀胱のあたりがキューッとする」「1分くらいおなかがカチッとしてバスケットボールのようになる」というとピンとくる妊婦さんが多いです。このときに痛むのは、子宮の収縮が強いからです。
妊娠37週以降の分娩は正期産といいます。要はいつ生まれてもいい時期なので、強めに張ってもかまいません。張った後に、おなかがふんわりと軟らかくなれば大丈夫です。
しかし、おなかが強く痛み5分以上もカチカチな状態が続くときは危険な疾患が考えられますので、我慢せずすぐに病院へ連絡をしてください。
前駆陣痛とは?

前駆陣痛とは、「陣痛?」と思うような痛みのある子宮収縮が不規則に出現することをいいます。痛みと痛みの間隔が、10分だったと思ったら次は25分だったりします。
痛みの強さにも強弱があり、一定ではありません。前駆陣痛から本物の陣痛がくるまでは1日の人もいれば2週間以上空く人もいます。
陣痛とは?
痛みのある子宮収縮が、10分毎に規則的に来ることが陣痛の始まりです。病院に連絡をいれましょう。経産婦さん(お産をしたことのある方)は病院に来るように指示されます。
初めてのお産の方は病院に行くまでにかかる時間にもよりますが、もう少し待って痛みと痛みの間隔が短くなってから受診するよう言われるかもしれません。お尻がぐっと押される感じがするときは急いで病院へ行きましょう。
便秘

妊娠すると初期からプロゲステロンという女性ホルモンによって腸の動きが悪くなり、便秘がちになります。さらに後期になると子宮が大きくなって腸を隅に押しやるのでさらに悪化します。
実はどんな痛みであるかは個人差があり、これは便秘、と言い切れるわけではありません。「痛くて救急車で運ばれたけど便秘だった」という人も、「便秘だろうと思いながら病院にきたらそのまま緊急手術になった」という人も診たことがあります。
便が硬いとか、たまにしか出なくなったと思ったら、早いうちから緩下剤を処方してもらいましょう。下剤の中には子宮を収縮させる成分が入っているものもありますので、安易に市販薬を飲まないようにしてください。
下痢
妊娠中は便の調子が悪く、なかなかすっきりしません。また急性胃腸炎にかかり、水っぽい下痢をすることもあります。それ自体は赤ちゃんに影響はありません。
しかし何度も下痢することで、子宮の収縮が増え、切迫早産になることがあります。妊娠36週以下で何度も下痢をした後におなかが張る、寝ても張りが落ち着かないというときは病院へ連絡しましょう。
おなかの赤ちゃんによる痛み

おなかの中で赤ちゃんが蹴ったり、頭をぐりぐりしたりすることで、痛いと感じることがあります。胎動が活発だと、赤ちゃんは寝ない子なのではと心配する方がいらっしゃいますが、関係ありません。
胎児は20分毎に起きたり寝たりしています。胎動があるのはいいことですよ。
腹痛の症状と種類(注意した方がいい痛み)
卵巣嚢腫(のうしゅ)の茎捻転、破裂

卵巣嚢腫は妊娠中~分娩後に茎捻転(つけ根からねじれる)や破裂を起こす可能性があります。
茎捻転も破裂も、大きさが5cmを超えると起こりやすくなり、腫れている卵巣側~真ん中あたりに突然激痛がします。
茎捻転を起こす確率は10~20%で、妊娠初期や分娩後に多いとされています。破裂は3%くらいで分娩時が多いです。妊娠後期に起こすことは少ないですが、卵巣嚢腫がある方は気を付けておきましょう。
子宮筋腫
子宮筋腫がある方は、変性といって筋腫の中が固形から液状になり、痛むことがあります。原因がわかったら鎮痛剤での対処が基本です。
子宮筋腫は切迫早産や赤ちゃんの回旋異常、分娩時の大量出血の原因にもなりますので注意深い管理が必要です。
なお、帝王切開の際についでに筋腫をとってほしいと言われる方がいますが、出血多量となる可能性やひどい感染を起こす可能性があるので行いません。
子宮破裂

帝王切開や子宮筋腫をとる手術を受けたことがある方は、一度子宮に切れ目が入っているので、陣痛などの強い子宮収縮のときにその部分が裂けることがあります。激痛です。
子宮破裂を起こすと赤ちゃんの救命は難しいため、これらの手術を受けた方は陣痛が来る前に帝王切開で赤ちゃんを産みます。
虫垂炎(盲腸)

妊娠中も、虫垂炎や尿路結石、胆石発作などの病気になる可能性はあります。このうち特に虫垂炎は、診断が難しい病気です。
普通は右下腹部が痛むのですが、妊娠後期は大きくなった子宮で腸が持ち上げられ、盲腸がどこにあるかわかりにくくなるのです。CT検査をせざるを得ないこともあります。
虫垂炎であれば、炎症がひどくなって破裂する前に手術をします。麻酔でお腹の赤ちゃんに影響があることは少ないです。また抗生剤も、妊娠中でも大丈夫なものを使用します。
受診の基準
次回の健診日でもいい症状
おなかがつつかれるような痛み、安静にすれば落ち着くおなかの張りなどは、次回の健診でもかまいません。
出産のための備えを早めにしておきましょう
入院準備をしておきましょう

入院するのは、出産予定日ごろとは限りません。切迫早産になって妊娠20週台から何ヶ月も入院になったり、予定日より何週間か早く赤ちゃんが生まれたりすることもあります。
妊娠36週といわず、早いうちから入院の準備をしておきましょう。母子手帳、健康保険証、診察券は必ず持ち歩いてください。
産褥パッドなどは病院でセット購入できることも多いので、とりあえずボストンバッグに授乳もできるパジャマ、産褥ショーツ、バスタオル、フェイスタオル、歯みがきセット、コンビニにあるようなトラベル用のシャンプーやボディソープ・化粧水などのセットを入れ、目立つところに置いておくだけでも安心です。
ベビー用品については、早い時期からすべて揃えておく必要はありません。例えば新生児用おむつはメーカーによってサイズが微妙に違い、合わないこともあります。
まず退院の時に着せる服や肌着、車で移動する方はチャイルドシートを買い、後はゆっくり揃えていきましょう。
おすすめはメーカーが出しているベビー用品のカタログをもらっておくこと!いろいろ見比べて吟味できますし、写真がついているので、入院中や退院直後で赤ちゃんとおでかけしづらい時期にも、パパに「これを買ってきて」とお願いしやすく、便利ですよ。
緊急連絡先をまとめておきましょう

「連絡先ならスマホに入ってるよ」と思うかもしれませんが、緊急時は病院のスタッフが電話することもあります。
母子手帳にパパだけでなく、自分の実家などの出産前後にお世話になる方の電話番号を書いておきましょう。ママとパパの勤務先、上の子の預け先、タクシーの番号なども一覧にして母子手帳に挟んでおくとなお良いです。
交通手段を整えておきましょう

家族の運転する車か、タクシーが基本です。病院のスタッフから「救急車で来てください」と言われた場合を除き、救急車を呼ぶのはNGです。
また、自分で車を運転して病院に行くのも避けてください。危険なうえ、受診後そのまま入院になるとき、乗ってきた車をどうするかでモメている妊婦さんとご家族も見かけます。
お住まいの地域によっては陣痛タクシーなどもありますので、探してみてはいかがでしょうか。
上の子の預け先などを確保しておきましょう

出産の時を含め、急に入院した場合に上の子をどこに預けるか、早めに決めておきましょう。
パパやおじいちゃんおばあちゃん、信頼できるママ友などをあたってみたり、日中は保育所などでの一時預かりもあります。市役所のホームページをチェックし、問い合わせてみてください。
妊娠後期のおなかの張りに関する体験談
妊娠31週で切迫早産になり入院

妊娠36週頃から、おなかの張りが頻繁に

まとめ
妊娠後期の腹痛にはたくさんの原因があります。いつ何が起こるかわからないのが妊娠期間です。
自分の体と赤ちゃんの命を守るために、不安なことやいつもと違うことがあれば、ひとりで我慢せず、病院に電話して聞いてみましょう!
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