異常出血とは|どのくらいの出血?その原因は?
異常出血について

出産後は約500ミリリットルの出血があるのが普通ですが、異常出血の場合、経腟分娩では約500ミリリットル以上、帝王切開では約1000ミリリットル以上の出血があります。
あまり頻繁に起きることではありませんが、新生児の娩出後は子宮からの出血過多に十分注意が必要です。これは子宮から胎盤がはがれると一部の血管が開いた状態になり、出血が起こるためです。
血管がふさがるまでは子宮は収縮して血管を閉じようとしますので、出血があるからといって心配する必要はありません。
しかし、胎盤が娩出される時期に入ってからの500ミリリットル以上の出血は過剰出血と見なされます。このような出血が考えられるのは出産後すぐのことが多いですが、産後1ヶ月経過してから起こることもあるようです。
原因
分娩後に子宮の収縮が出来ないと大量出血が起こることがあります。その場合は、胎盤がはがれる時に開いた血管からの出血が止まらなくなります。
以下のような状況において子宮の収縮がうまくいかないことが見られます。
(1) 子宮の羊水量が過多と見なされた場合
(2) 多胎妊娠の時や、胎児が大きかった場合
(3) 子宮が過度に大きくなってしまっている場合
(4) 分娩後に胎盤の一部が子宮に残ってしまった場合
(5) 分娩が長引いた時や異常分娩と診断された場合
(6) 6回以上出産経験がある妊婦の場合
(7) 分娩時に筋弛緩性の麻酔薬を使用した時
また次のような事項も出血過多の要因となります。
(1) 分娩中に腟や子宮頸部が裂けたり切れてしまった場合
(2) 血液凝固の作用が低下し、血液が固まりにくくなった場合
(3) 妊婦が血液凝固障害の原因となる出血性疾患を患っている場合
(4) 稀ではあるが、子宮が破裂したり裏返しになった場合
分娩後に出血過多を1度でも経験した方はその後のリスクも高くなります。子宮筋腫など妊娠以前の問題も出血過多のリスクを高めることがあるので妊娠前から注意が必要です。
母体の死亡率
現在では周産期管理の発達により母体の死亡率は低下してきたものの、分娩時と分娩後の出血は産後の肺血栓塞栓症と同等の死亡原因の上位を占めており、母体死亡原因の30%にのぼるようです。
分娩時の異常出血の症状
分娩時の異常出血とは
分娩時の異常出血にいろいろなものがあります。また、原因が単独の場合と、様々な要因が重なることで起こる場合とがあります。
内科的な疾患、とくに血液疾患の合併が原因の異常出血にはより注意が必要です。
【分娩時の異常出血の原因(1)】前置胎盤
「前置胎盤」とは、子宮の天井側に形成される胎盤が低位置に形成されてしまうことで、胎盤の一部、もしくはすべてが子宮内口を覆ってしまう非常に危険度の高い状態です。
胎盤の位置が低いことによって、本来は足の方へと血液を導く外腸骨動脈系の血流も増加しています。前置胎盤や前置胎盤に合併することが多い、癒着胎盤による出血量を減少させるのが難しくなるため、多量出血の可能性があるのです。
【分娩時の異常出血の原因(2)】常位胎盤早期剥離
赤ちゃんの生存を左右する胎盤が、何らかの理由ではがれ落ちてしまうことを言います。この剥離した部分には出血でできた血の固まりが出来ます。
これを胎盤後血腫といい、胎盤後血腫で母体の血液の状態が変化すると、胎内の血が固まりにくくなる症状を引き起こすこともあります。
これによって出血多量によるショックや臓器障害を引き起こし、最悪の場合、死に至ります。
【分娩時の異常出血の原因(3)】子宮破裂
妊娠している子宮体部に起こる裂傷を子宮破裂といい、異常出血がこれに起因します。原因として考えられるのは産道における問題で、強すぎる陣痛が起こった場合に発生します。
多くの数出産を経験した方、帝王切開や子宮手術後の傷のために子宮が弱くなっている場合に起こりやすい疾患です。
また陣痛促進薬の投与、産科手術が原因となる場合もあります。症状としては陣痛が強くなった時に、強い腹痛を感じ、陣痛がこなくなります。
【分娩時の異常出血の原因(4)】癒着胎盤
癒着胎盤とは、胎盤が子宮筋に付着して離れない状態のことを言います。不完全な胎盤娩出や感染症だけでなく、出血を引き起こす原因となります。
主な要因としては胎盤異常がある場合、35歳以上を超える高齢出産の場合、帝王切開または筋腫切除術を経験した妊婦の場合、子宮内膜異常や子宮筋腫がある場合などが考えられます。
癒着胎盤の診断は出産に先立ち、超音波検査、あるいはMRIによって診断されることがあります。その場合、帝王切開と子宮摘出手術が行なわれます。
通常であれば赤ちゃんが生まれてから45~60分以内に胎盤が娩出されますが、そうでない時に癒着胎盤が疑われます。
子宮摘出が根治的な治療法ではありますが、再妊娠を考えている場合や出血が多量でない場合などは、異常部位の切除により子宮摘出を回避することも出来ます。命に異常が無い場合は子宮温存が優先されるでしょう。
体験談
shunmamaさんからの体験談:
前置胎盤により、出血が多くて、輸血する手前だったそうです。母子手帳には、出血多量と書かれています。それによる貧血がすごくて、しばらく立ってもふらついていました。
必ず、手すりにつかまるように言われました。帝王切開だったので、傷の跡もくっきりと残っていますが、抜糸はなく、溶ける糸だったので、痛みは、痛み止めの薬を飲むと大丈夫でした。出産翌日から、母子同室だったので、傷の痛みと眠気と闘いながらの、育児となりました。
異常出血を引き起こさないためにできること
治療法
早期に出血部分の止血が行われることが最優先事項です。母体の状態を改善するための治療と並行して出血に対する産科的な止血処置が求められます。
出血性ショックや、後遺症を防ぐためにも、輸液・輸血療法が行われます。また緊急を要する場合は高次施設への搬送も考えられます。
まとめ
分娩時・分娩後の出血のリスクは30人に1人と考えられています。また、予期せぬ大量出血の可能性もあり、後遺症を併発しやすいという特徴もあります。
予期せぬ事態が起きた時も慌てないよう、出産予定日前であっても高次の施設搬送が可能かどうかなど確認しておくのも良いでしょう。
出産にはリスクは付いて回ることもあります。持病があったり、不安原因がある場合は早急な対応ができる総合病院などでの出産が安心ですよ。
(文書作成:ヴァネ)
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