長時間の立ち仕事
長時間の立ち仕事の注意点

昔から、長時間の立ち仕事は妊婦さんにはあまり良くないと言われています。では、具体的にどのような症状や危険があるのでしょうか?
厚生労働省委託の母性健康管理サイトによりますと、長時間の立ち仕事を経験した妊婦さんの約62%が、立ち仕事が辛かったと答えています。
ただしこれは、妊娠初期に限らず全ての時期の妊婦さんを対象に調べた結果ですので、妊娠初期に限定した結果ではないことを心にとめておいてください。
妊娠初期に限って言いますと、長時間の立ち仕事の影響は妊娠後期に比べると比較的少ないと思われます。これは、まだお腹が小さいので身体的負担が軽いためです。
とは言っても、妊娠初期はつわりが最も辛い時期ですし、非常に疲れやすい時期でもあります。また、妊娠すると血液量が増えて、それに伴って貧血状態になるので、立ちくらみやめまい等を起こしやすく、むくみも出始めます。
立ち仕事では特に足のむくみがひどくなるかもしれません。辛いなと思ったら、無理をせず上司や同僚に相談して短時間でも休憩をとりましょう。
長時間の立ち仕事をすることで流産の危険性が上がることを心配される方が多いかもしれませんが、これに関してはあまり心配しなくても大丈夫です。
流産の原因は7割以上が受精卵にあると言われていますので、非常に酷な言い方ですが、流産する時はどんなに安静にしていても流産してしまうことが多いのです。逆の言い方をすれば、健康な受精卵であれば、母体が多少無理をしても頑張って生まれて来てくれます。
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こんな症状が出たら気をつけて
前項で、立ち仕事で流産の可能性が高まることはほとんどないと書きましたが、茶色のおりもの(最近では茶おりと呼ばれていますね)や出血、腹痛、腰痛などの、切迫流産の徴候が見られる場合には、無理せず上司に相談して休暇を取ることをおすすめします。
これには、妊婦さんの精神的ストレスを和らげるという意味もあります。先ほども触れたように、ほとんどの流産は安静では防げませんが、それでも中には、安静にすることで免れる流産もあります。
こればかりは、その時期を過ぎてみないとわかりませんので、医師もあきらめずに安静を保つことをすすめます。
たとえ悲しい結果になってしまったとしても、安静を保って「できるだけのことはした」と思えることと、無理に仕事を続けて「あのとき仕事を休んでいれば良かった」と後悔するのとでは、後々の妊婦さん精神状態に大きな違いが出ることもあります。
対策
この時期、長時間の立ち仕事によって起こりやすいのは、足のむくみと貧血症状によるめまいや立ちくらみです。フルタイムの仕事であれば、4時間続けて勤務したら30分~1時間の休憩をとれるように上司にはからってもらいましょう。
また休憩時間以外でも、1時間毎に少し座らせてもらったり、水分補給したりするなど、ほんの少しでいいので休息を取るように心がけましょう。
妊娠初期は、つわりで気持ち悪いことも重なって、脱水状態に陥りやすくなります。そうなると、貧血がひどくなるばかりでなく、頭痛も起きることがあります。この時期は痛み止めを服用することもできませんから、頭痛予防のためにも水分はこまめに十分に摂りましょう。
さらに妊娠初期はトイレが近くなりますが、我慢せずにこまめにトイレに行くことが、足のむくみ予防につながります。
美容師さんやアパレル関係など接客業の方の場合、なかなか定期的に休憩を取るのは難しいとは思いますが、立ちっぱなしよりは少しでも歩いた方が血流を良くする効果があるので、トイレ休憩は意識的に多くとるようにしましょう。
体験談:違和感があったら座って休憩を
alpus23さんからの体験談:
仕事が立ち仕事だったので妊娠初期のお腹の張りが、お腹が大きくなるための痛みなのか、良くない痛みなのかの区別がわかりませんでした。なので、なんとなく違和感がある時は時々座って休憩してみたり、トイレに行くたびに出血してないか確認したりしていました。
とにかくわからない事が多くて、精神面での不安が大きかった様に思います。
力仕事
妊娠中の力仕事の注意点

力仕事も、立ち仕事と同様に妊婦さんにはあまりよくないとされています。特に、重いものを持つと流産の危険性が上がるという話を良く聞きます。しかしこれは事実でしょうか?
前項でもご紹介した「女性に優しい職場づくりナビ」によりますと、妊娠中の力仕事が辛かったと答えている人は、全体の30%にすぎません。
もちろん、お腹が大きくなって来る妊娠後期には、以前よりも体重そのものが増えていますから、それに加えて重いものを持つことは身体的に大きな負担になることもあります。しかし、妊娠初期では、重いものを持つことが以前より辛いと感じることはあまりないかもしれません。
ただし、つわりや貧血などの影響で、仕事そのものが妊娠前よりも辛くなるということは十分に考えられます。立ち仕事の場合と同様に、こまめに休憩を取り、あまり無理をしないようにして下さい。
さて、流産の危険性ですが、これも先ほどの立ち仕事と同様に、明らかに上がるという根拠は今のところありません。
妊娠後期になると、力仕事によってお腹の張りが起こることがありますが、妊娠初期ではお腹の張りという自覚症状はまだなく、腹痛を誘発するということもあまりありません。
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こんな症状が出たら気をつけて
立ち仕事の場合と同様で、切迫流産の徴候である腹痛、腰痛、出血などが見られたら注意が必要です。重いものを持ち上げることで腰痛になることもありますが、中には切迫流産の徴候である場合もありますので、無理せず産科医の診察を受けましょう。
対策
重いものを持ち上げる時は、できるだけお腹に力を入れずに、脚や腕の筋肉を使うようにしましょう。例えば、床からものを持ち上げる時には、しゃがんでまずは膝に乗せてから、両腕に抱えて持ち上げましょう。
立った姿勢で床から一気に持ち上げると、お腹や腰に負担がかかります。台車やワゴンがある場合は、多少時間的なロスが出てもそれらを利用するようにしましょう。また、可能であれば、妊娠を機にあまり力仕事のない部署に配置換えをしてもらうというのも一つの選択肢です。
特に高齢の妊婦さんの場合は、若い方と比べていろいろな面で無理がきかなくなるので、配置換えだけでなく、常勤からパートへの異動なども視野に入れた方が良い場合もあります。お腹の赤ちゃんを第一に考えて、無理をしないように心がけましょう。
体験談:自分にできる仕事を探した
ちゅん*さんからの体験談:
とにかく重い荷物は絶対に持つな!と聞いていたので仕事ではダンボールなどは他の方にお願いして、今自分に出来る小さなお仕事を必死に探しました。
8週頃からつわりできつかったので、立ち仕事でしたがイスに何度も座らせてもらったり時にはバックヤードで横になったりしていました。
また、まだ母子手帳がもらえてない時だったので電車通勤の際は人ごみをなるべく避けたり、優先席付近にいたり、座れなさそうな時は窓の手すりのところを確保したり通勤にも気をつけました。
会社は妊娠中の労働者へ配慮を
母性健康管理指導事項連絡カードを出しましょう

企業には、妊娠中の従業員の健康に配慮して労働環境を整える義務があります。日本は海外に比べてまだまだ遅れていますが、それでも近年、働く女性の増加によって日本企業でも様々な改善がなされています。
「母性健康管理に関する企業の義務」もその一つで、妊娠中の女性が健康上の不安などを申し出た場合、企業側は、時短勤務や通勤緩和、休憩時間や回数の増加、異動などの措置をとる義務があります。
健康上の不安や産科医からの指示などをわかりやすく企業側に伝えるために、「母性健康管理指導事項連絡カード」を活用しましょう。これは、厚生労働省が推進しているもので、下記の参考サイトからダウンロードすることができます。
このカードを産科医に記入してもらい、企業に提出することで、より具体的に、どんな措置が必要なのかを明確にすることができます。
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まとめ
妊娠初期の立ち仕事や力仕事は、直接流産に結びつくものではないのであまり心配しないで下さいね。とは言っても、妊娠初期は体力や免疫力の低下、つわりや貧血などで辛い時期です。無理をせず、仕事がきついなと思ったら、ぜひ産科医に相談して母性健康管理指導事項連絡カードを活用しましょう。
妊娠初期は、いろいろな不安から職場への報告を躊躇してしまいがちですが、いざという時に配慮してもらうためには、妊娠が分かった時点で、直属の上司だけには報告しておくほうが安心です。普段から良い関係を築いておくと、妊娠報告もスムーズにできそうですね。
・表示価格は、改正前の消費税率で掲載されている場合があります。ご了承ください。