虫垂炎はどんな症状?

主な症状は、強い腹痛と嘔吐と発熱

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虫垂炎は、大腸の盲腸部分にぶら下がったように付いている虫垂という臓器が、炎症することでおこる病気です。

虫垂のある部分が盲腸下部なので、昔から「盲腸」という呼び名が定着しています。虫垂炎の主な症状は、強い腹痛と嘔吐と発熱です。

腹痛の部位と痛みは時間の経過とともに変化します。始めには、上腹部に痛みが現れます。その後、右下腹部へと痛みが移動します。

右下腹部痛は、炎症が進行するとともに強くなり、我慢できない程になります。虫垂の炎症が進むと、炎症による発熱が現れます。

発熱は個人差がありますが、微熱~軽度の発熱が多く、高熱が出ることは少ないようです。また、すぐ近くにある腹膜を刺激し、嘔吐を引き起こします。

虫垂炎が進行すると、虫垂が壊死して破れ、腹膜内に細菌や腸の内容物が広がってしまう恐れがあります。すると、虫垂の炎症が腹膜まで広がり、腹膜炎を引き起こすこともあります。

また、炎症した部分から細菌が血管内に入り込み、血液の流れとともに細菌が全身に回ることによって、敗血症という病気になることがあります。

原因は?

虫垂が炎症することで起こる虫垂炎。炎症する原因はまだはっきりと解明されていません。

糞便や異物などが虫垂の入り口を塞ぎ、血の流れが悪くなった状態のところに細菌が入り込み、炎症を起こすのではないかと言われています。

昔から、スイカの種が虫垂に入ると盲腸になるなどと言われますが、ただの迷信です。

何歳ごろからなる?

虫垂炎の発症率は高く、15人に1人がかかる病気だとされています。一番発症するのが多い年齢は10代で、2歳以下の発症は少ないようです。しかし、年齢を問わず誰もがかかる可能性のある病気です。

6歳以下の子どもだと、虫垂の壁が薄く、炎症の防御機能も完成していないので、虫垂が破れ、腹膜炎などの合併症になる可能性が高くなります。

小さな子どもは、自分の体の症状をうまく言い表せないので、病気の発見が遅れ、炎症の進行が進んでしまうこともあります。

親が気づける兆候・症状

子どもが虫垂炎にかかっているかどうかは、まず初めに現れる、上腹部の痛みと嘔吐の症状に注意しましょう。

これらの症状は、胃腸風邪などの胃腸系の病気でも多く見られるものなので、虫垂炎だと判断するのは難しいです。子どもは胃腸の病気にかかることが多いので、なおさら判断は難しくなります。

次に気に掛けるべき点としては、子どもの状態をよく観察することです。腹部の激しい痛みから、歩く時に前かがみになったり、上向きに寝られなくなったりします。

そのため、横向きに寝て、足を曲げるようになります。食欲もなくなり、ぐずぐずと不機嫌になり、ぐったりします。

虫垂炎の初期では、医師でも診断が難しいので、一般の方で気づくのはさらに難しいことだと思います。明らかにいつもの子どもの様子と違う場合には、すぐに受診するようにしましょう。

虫垂炎になったら

診断方法

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虫垂炎の診断方法は、腹痛の部位、腹部を圧迫することで痛みがあるかどうかや、嘔吐などの症状から判断します。さらに、血液検査で白血球の増加を測定して、炎症の有無を確認します。

白血球の数値は、虫垂炎を診断するのに重要なものですが、約20%の子どもに、白血球の増加が見られないことがあり、診断を遅らせる原因ともなっています。

また、炎症による発熱が起こらない子どもが約20%います。腹部超音波検査で、虫垂の腫れ、虫垂の中に糞便などがあるのを発見された場合、診断の助けとなります。

このように、子どもの虫垂炎の診断は、特に難しくなります。ですから、虫垂炎が疑われる場合は、入院をすすめて経過を慎重に診ていく必要があります。

治療方法

虫垂炎は、炎症の進行具合によって、3段階に分けられており、この段階によって治療方法が変わってきます。

【第1段階】
一番炎症症状の軽い状態を「カタル性虫垂炎」と言い、薬物療法だけでよく、手術をする必要がありません。主に抗生剤の点滴を行います。

【第2段階】
次に炎症が進んでいる状態を「蜂窩織炎性(ほうかしきえんせい)虫垂炎」と言います。虫垂は破れていないけれど、虫垂の中に膿などが溜まった状態で、手術が必要です。

【第3段階】
一番症状が重いのが「壊疽性(えそせい)虫垂炎」と言い、虫垂が壊死して破れ、腹膜炎などを合併した状態で、手術が必要になります。

手術は、虫垂を取り除くもので、術式には開腹術と腹腔鏡下内視鏡術があります。腹腔鏡下内視鏡術は、お腹を切る範囲が狭くて済むのがメリットですが、状態によっては適応できないことがあります。

腹膜炎を合併している場合には、虫垂の切除に加えて腹膜炎の部位の切除や、腹腔内の膿などを体の外に出す処置などが必要になります。

どの段階で治療を始めるかによって、治療内容や治療期間が変わってくるので、できるだけ早い段階での治療が重要になります。

治療(手術)後の注意点

点滴で栄養を摂る場合も

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虫垂炎の治療は、入院治療になることがほどんどです。手術する場合はもちろんですが、手術の必要ない薬物治療だけでも、子どもは入院になることが多いです。

入院中は、食事制限が必要になるので、できるだけ早く治すためにも必ず医師の指示に従いましょう。入院期間は、病状によって変わってきます。

薬物療法の場合は、炎症が治まり、点滴が不要になれば退院することができます。手術した場合は、手術後に24時間過ぎ、おならが出たら、口から食べ物をとれるようになります。もちろん術後食で、病院側から準備された物のみ摂取可能となります。

状態が回復してくると、食事の内容も変わり、一般食を食べられるようになります。その間も、抗生剤の点滴を行います。

術式にもよりますが、1週間ほどで退院することも可能です。開腹手術より、腹腔鏡下内視鏡手術の方が、早く退院することができます。

腹膜炎などの合併症がある場合には、長期で抗生剤の点滴が必要になります。口から食事をとることもできなくなるので、点滴などから栄養をとることになります。

入院も長い場合は、1か月以上かかることがあります。

再発はする?

虫垂を切除しないと再発する可能性がある

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手術して虫垂を切除した場合には再発しませんが、虫垂を残したまま薬物治療をした場合には、10~20%の確率で再発すると言われています。

昔から、虫垂は特に大切な働きをするわけでもなく、無くても良い臓器だと言われていました。しかし、最近の研究で、虫垂は免疫物質を作り、腸内の環境を整える働きがあるのではないかと発表されました。

まだ確定していないのではっきりとは分かりません。しかし、虫垂を切除した場合は、腸内の環境を整えるよう心がける方が良いかもしれませんね。

できる対策は?

虫垂炎の原因がはっきりと分からないので、効果的な予防法はありませんが、腸内の病気なので、腸内の環境を整えておくことが大切です。

下痢や便秘をしないように、食生活を整えるようにするとよいでしょう。ストレスを溜めないようにすることも効果的です。

あとは、規則正しい生活を送り、体の免疫力を高め、病気になりにくい強い体を作るように心がけましょう。

子どもの異変に気づいてあげられるように、日ごろから子どもの体調を注意してみておくことも大切です。

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※夜間休日、お子さまの健康状態に心配なことがある場合や受診の目安に迷った場合は子ども医療電話相談♯8000に相談をおすすめします。

厚生労働省・子ども医療電話相談事業
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/10/tp1010-3.html

まとめ

虫垂炎のについてご紹介させていただきました。腹膜炎などの合併症を防ぐためにも、できるだけ早く病気を発見して、治療してあげたいですね。

しかし、子どもの虫垂炎は医師でも診断が難しいものなので、ママが気付けない場合も多くあります。子どもが虫垂炎になった場合は、発見が遅れても自分を責めずに、前向きに治療してくださいね。

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