目次
ノロウイルスとは?
胃腸症状を起こす、感染力の強いウイルス
ノロウイルスは、激しい嘔吐と下痢などの胃腸症状を起こす病気です。感染力が強く、経口感染、糞口感染などで感染します。
乳幼児だと、子どもが集まる場所のおもちゃや衣類から感染することもあります。大人だと2日前後で症状が治まりますが、乳幼児や高齢者だと重症化することもあります。
乳幼児は、11月~2月に流行することが多いようです。
ノロウイルスの症状
前触れなく、急な胃腸症状におそわれる
ノロウイルスの症状は急に現れるのが特徴です。
中には、初めに38度以下の微熱を出す子どももいますが、急に起こる胃腸症状で子ども本人やママが気付くことが多いようです。
胃腸症状は、お腹のチクチクした痛みから始まります。痛みは次第に強くなり、吐き気をともなうものになっていきます。
激しい吐き気におそわれ、何回も嘔吐することも。吐き気が治まった頃から、今度は下痢が始まり、水のような便を何回もすることになります。
これらの症状は、大人なら2日前後で治まりますが、免疫力や体力のない乳幼児だと、治まるまでにもっと日数が必要になります。
ノロウイルスは頻回な嘔吐と下痢がおこるので、体の水分が大量に失われ、脱水症状を起こす危険があります。まれに、けいれん症状、「腸重積」を起こすこともあります。
腸重積は、腸の一部分が腸の中に潜り込んで重なってしまう病気で、激しい痛みをともないます。早期に治療しないと、重なった腸の部分が壊死してしまうので、注意が必要になります。
ノロウイルスの潜伏期間
1~2日の潜伏期間をへて発症する
ノロウイルスの潜伏期間は、だいたい1~2日と言われています。
ノロウイルスの症状が治まっても、体の中には1週間、長いと便中に2週間以上もウイルスが残っている場合があります。
体の中のウイルスは、糞便や吐物と一緒に排出されるので、2次感染を引き起こす恐れがあります。
ノロウイルスの症状が治まったからといって安心せず、ノロウイルスの感染予防をしっかり行ってくださいね。
ノロウイルスの診断と治療方法
診断
一般的に、症状や体の様子から、医師が判断して診断することがほとんどです。
ノロウイルスが流行っている季節か、周りにノロウイルスに感染している人がいるかどうかなどの情報も診断の参考にされます。
現在、ノロウイルスかどうか判定できる検査キットがありますが、3歳未満と65歳以上の人にしか保険適用とならず、保険適用外の人が検査しようとすると高額な検査費用を負担しなければなりません。
また、100%の判断材料にできるものでもないため、一般的に浸透した検査とはなっていません。
施設などで集団感染した場合などの原因を探るために、これを使って検査をすることが多いようです。
ノロウイルスは特有の治療薬がないので、病名を確定する必要が少ないせいもあると思います。
治療方法
ノロウイルスを治療するための特有な薬はないため、基本的に対処療法を行うことになります。嘔吐が激しい場合には、吐き気止めの薬を内服します。
下痢症状がある場合には、整腸剤などの胃腸の働きを整える胃腸薬を内服します。下痢止めは原則として処方されません。
嘔吐と下痢によって体の水分が失われるので、水分補給も大切になります。
少しずつでも食事をとれる場合には、少量を回数を分けて食べるようにすると、負担が少なくてすみます。食事ををとれない場合には、水分だけでもとるようにしましょう。
水分もとれないほど症状が重症な場合には、必ず小児科に受診しましょう。脱水を起こす危険があるため、点滴で水分を補給することもあります。
乳幼児は大人に比べて脱水になりやすいので、注意が必要になります。
ノロウイルスにかかった場合の食事
水分補給を中心に、とれるようなら消化の良いものを

一番大切なことは、水分補給をしっかりすることです。嘔吐が酷い時に無理して食事をする必要なありませんが、脱水をおこさないためにも、水分はとる必要があります。
体内の水分バランスを整えてくれる働きのある、スポーツドリンクや「経口補水液OS-1」などを、ゆっくり一口ずつ飲むようにしましょう。
症状が治まってきて、食事もとれるようでしたらとってかまいません。嘔吐と下痢によって、胃腸も弱っているので、消化の良いものを食べるようにしてください。
まずは、消化が良く飲みこみやすいおかゆから始めるといいでしょう。
おかゆが大丈夫であれば、やわらかく煮たうどん、野菜を細かく切ってやわらかく煮たスープなどを与えるようにしてください。
すりおろしたリンゴも、口当たりがよく栄養価が高いのでおすすめです。
子どもの好物だからといって、フライドポテトや唐揚げなどの油もの、カレーなどの香辛料の入った刺激の強いものは、胃腸の負担になるので与えないようにしてください。
子どもの状態に合わせて、ゆっくり食事を進めていってくださいね。
ノロウイルスの予防と対策
予防
予防として一番に行うことは、手洗いです。手洗いを徹底して行うことで、経口感染のリスクを減らすことが出来ます。
きちんと手洗いしているつもりでも、洗い残している場合があります。特に忘れがちな、爪の間、指と指の間、手首まで、しっかりと洗うようにしましょう。
ノロウイルスはアルコールに耐性があるものもあり、石鹸でも死滅させることができませんが、細かい部分の汚れをしっかりと洗うことができるので、石鹸と流水で洗うようにしてください。
手洗いとうがいは、ノロウイルスだけでなく、他の感染症にも予防の効果を発揮してくれるので、手洗いだけでなくうがいも一緒に習慣化するのがおすすめです。
室内の湿度を40~60%に保つのも、予防効果があります。のどの粘膜は、乾燥すると免疫機能が低下してしまいます。
のどの粘膜から感染しないためにも、加湿器などで湿度を調整するようにしましょう。調理器具や食器を熱湯消毒することで、感染を防ぐこともできます。
雑菌の繁殖しやすい、まな板や食器を洗うスポンジなどを、85度~90度以上の熱湯に90秒以上つけることで、殺菌することができます。
牡蠣などの二枚貝は、ノロウイルスの原因となることも多いので、しっかり加熱してから食べる方が安心です。
どんなに新鮮なものでも、乳幼児には生で食べさせないようにしてください。また、外出時などは、吐しゃ物や糞便に近づかないようにすることも大切です。
対策

子どもがノロウイルスに感染してしまった場合、2次感染を防ぐことが重要になります。特に看病する役割が多いママは、もっとも注意が必要になります。
子どものおむつ交換時や、吐しゃ物を片付ける時には、ビニール手袋をつけて、直接吐しゃ物や糞便にふれないようにしましょう。
また、吐しゃ物を吸い込んでしまうことでも感染してしまうので、マスクをつけることをおすすめします。
さらに、片付けた吐しゃ物や糞便は、しっかりとビニール袋などに入れ密閉してから処分してください。手洗いとうがいも、必ず行うようにしてくださいね。
調理をするときは、料理の盛りつけ前や、次の調理工程に入る前など、こまめに念入りに手洗い消毒することをお忘れなく。
また、吐しゃ物や汚物の処理方法や消毒方法は、次の項目で詳しく説明させていただきます。
塩素消毒液の作り方と使用法

家族の健康を守るママへ、ぜひ知っておいていただきたいのが「塩素消毒液」です。塩素消毒液は、ノロウイルスの感染予防と対策に効果が期待できます。
ご家庭にある塩素系漂白剤の成分表をご覧ください。「次亜塩素酸ナトリウム」が含まれているものは「塩素消毒液」として代用ができます。
下記では、厚生労働省のノロウイルス予防対策に基づく塩素消毒液の作り方と使用法をご紹介します。
【作り方】
次亜塩素酸ナトリウムが含まれる塩素系漂白剤を水で薄めて使います。製品によって濃度が異なりますので、今回は濃度6%の製品を例にとってご紹介させていただきます。
濃度6%の原液10mlに対して、3Lの水で薄めます。これで200ppmの濃度の消毒液ができます。濃度によって効果が異なってくるようですので、きちんと計りましょう。
【使用法】
感染者が使った食器やさわったもの、吐しゃ物などを、消毒したり拭き取ったりする時に使用します。感染者と他の家族のものは分けて消毒するようにします。
吐しゃ物が付着したタオルやシーツは、消毒後、洗剤を入れた水の中で静かにもみ洗いし、水ですすぎます。
食器類は、十分に消毒した後、水でよくすすぎましょう。感染者がさわったドアノブなどは、消毒後、十分に水拭きするようにしましょう。
吐しゃ物を拭き取る場合には、まずは、ペーパータオルなどで拭き取ってから消毒するようにしましょう。
また、広範囲に渡って飛び散っている場合があります。まんべんなく消毒するようにしましょう。
吐しゃ物や処理に使ったペーパータオルやマスク、ゴム手袋などは、ビニール袋に密閉して廃棄します。この時ビニール袋の中で、さらに1000ppmの塩素消毒液に浸すとより効果的なようです。
【注意点】
・次亜塩素酸ナトリウムは使用期限内のものを使用する。
・使用時は必ず換気する。
・汚物処理時は、使い捨ての手袋、マスク、ガウンなどを着用する。
・消毒液が皮膚についてしまった場合は、十分に水で流す。
・吐しゃ物に直接振りかけると有害物質が発生する場合もあるので、使用上の注意事項をよく読む。
・消毒液を保管する場合は、誤って飲まないよう消毒液であることを明記の上、子どもの手の届かない場所に置く。
・消毒後、処理後はよく手を洗う。
ノロウイルスは感染力が強いため、2次感染して家族全員に感染してしまうこともある病気です。子どもたちの面倒をみなくてはいけないママが倒れてしまったら大変ですね。
家庭用の漂白剤は、手軽に手に入れることができます。これらの注意事項を参考にしていただき、自分と家族の健康を守ってくださいね。
専門機関へのご相談はこちら
※夜間休日、お子さまの健康状態に心配なことがある場合や受診の目安に迷った場合は子ども医療電話相談♯8000に相談をおすすめします。
厚生労働省・子ども医療電話相談事業
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/10/tp1010-3.html
まとめ
ノロウイルスの潜伏期間や症状、消毒方法などについてご紹介させていただきました。ノロウイルスの予防は、健康管理・手洗い・消毒がポイントです。
手洗いとうがいは単純なものですが、他の感染症にも効果が期待できます。家族で、ぜひ習慣化するようにしてくださいね。
・表示価格は、改正前の消費税率で掲載されている場合があります。ご了承ください。