Chapter3 授乳とくすり

1.授乳中のくすりの影響

女性と赤ちゃん,授乳,くすり,

● お母さんがくすりをのむと、ほとんどのくすりで、その成分が母乳中に移行するといわれています。しかし、多くの場合、お母さんがのんだくすりの量のごくわずかしか、母乳中に移行しません。

たとえ、赤ちゃんがくすりの成分が入った母乳をのんだとしても、赤ちゃんの体に吸収されるのはその一部分でしかありません。

このため、多くのくすりは最終的に赤ちゃんに何らかの影響をおよぼすことはまずありません。

● なかには赤ちゃんに影響が出るぐらい吸収されるくすりもあります。しかし、そうしたくすりはとても限られています。

母乳の大切さ

授乳するママ,授乳,くすり,

母乳は赤ちゃんにとって理想的な栄養成分を含みます。母乳に含まれる成分には感染症の予防や神経発達を促すなど優れた効果があります。

また、お母さんと赤ちゃんのスキンシップを促す意味でも授乳はとても大切です。残念ながら、ひとたび母乳をやめてしまうと、ホルモンの変化などにより母乳を再開することはむずかしくなります。

くすりをのむ必要がある場合でも、まずは授乳できる方法を考えましょう。しかし、母乳をあげられないと子供が育てられないわけではありません。

医師と相談して、持病やのんでいるくすりの関係から、どうしても母乳がむずかしい場合は、母乳にこだわることはありません。

2.授乳中のくすりの服用

薬局での説明を受ける女性,授乳,くすり,

● 多くのくすりは赤ちゃんの体に吸収される量が少ないので、くすりをのみながら授乳を続けることができます。

ただし、授乳中にくすりをのみたい時は、それぞれのくすりの情報をもとに、医師や薬剤師などの専門家と相談しながら決めていくことが大切です。

● お母さんが病気のためにくすりを長くのむ場合は、注意が必要です。授乳の度に、くすりが赤ちゃんの体に蓄積して影響が出る可能性があるからです。

その場合は、治療を受けている医師や産婦人科医、小児科医、薬剤師と事前に相談し、長くのんでも赤ちゃんに影響しないくすりに変更する、赤ちゃんの様子を見ながらくすりを続けるなどしてください。

ただし、病状によっては母乳をあげること自体がストレスとなる場合もあるので、無理はしないでください。

● くすりの影響を少なくするには、乳汁中のくすりの濃度の推移を踏まえて、授乳と服薬の時間を考える必要があります。

乳汁中のくすりの濃度の推移は、お母さんの血液中のくすりの濃度の推移とほぼ一致します。薬剤師と相談すれば、そうした情報を教えてもらえるでしょう。

● 妊娠と薬情報センター(国立成育医療研究センター内)のホームページで、授乳中のくすりの情報を知ることができます。

授乳中に安全に使用できると思われるくすり(99種類)、 授乳中の使用に適さないと判断されるくすり(4種類)などを確認できます。

● 多くのくすりは授乳中にのんでも赤ちゃんへの影響はほとんどありません。授乳中にのんでも問題ないくすりの成分の一部分を下表にあげました。

※画像はクリックすると、大きく表示されます。

くすりの成分表,授乳,くすり,

「妊娠と食品・嗜好品」Q&A

妊娠中は、ふだんより健康に気をつける必要があります。ここでは食品や嗜好品についてよくある質問をまとめました。

Q.妊娠中にサプリメントをとった方がいいですか?

食事中の妊婦,授乳,くすり,

A.安易なサプリメントの摂取は控え、まずはバランスの良い食事を基本に考えましょう。食事や栄養について不安があれば医師や管理栄養士などに相談してください。

ただし「葉酸」は、 赤ちゃんの脳や脊髄が健康に育つために大切で、妊娠中は必要量が増えるビタミンです。妊娠前から食品に加え、サプリメントとして1日0.4mgを摂取しましょう。

サプリメントにほかのビタミンが入っていても構いませんが、必ず妊娠しようと思っていることや妊娠していることを伝えて購入してください。

ビタミンAのように、摂りすぎると赤ちゃんに良くない栄養素もあります。

Q.妊娠中に避けたほうが良い食べ物はありますか?

生ハムとサーモン,授乳,くすり,

A.妊娠中は、一般の人よりもリステリア食中毒になりやすくなり、赤ちゃんに影響が出ることがあります。

生ハムなどの食肉加工品、未殺菌乳、ナチュラルチーズなどの乳製品(加熱殺菌していないもの)、スモークサーモンなどの魚介類などの食品から感染します。

また、生肉や洗っていない野菜や果物からトキソプラズマに感染することもあります。妊娠中はこれらの食べ物を避けて下さい。

チーズとパテ,授乳,くすり,

Q.妊娠中のタバコ、お酒はいけないの?

ビールとたばこ,授乳,くすり,

妊娠中のタバコは早産や未熟児が産まれる原因になるので絶対にやめましょう。妊娠中のお酒も避けた方が良いでしょう。

アルコールは胎盤を自由に通過します。つまり、おなかの赤ちゃんも、お母さんと同じように酔った状態になります。

多量にのめば赤ちゃんの発育に大きな悪影響が残ります。少量であれば安全と考えられていますが、どの程度なら安全と言える基準がないので、やはり妊娠中のお酒はやめた方が良いでしょう。

(参考)「妊娠・授乳とくすり」相談窓口

かかりつけの医師、産婦人科医、薬剤師など

窓口のイメージイラスト,授乳,くすり,

くすりについて気になることがあれば、ひとりで悩まないで、まずは身近にいる専門家に相談することが大切です。くすりの種類や病状などを踏まえて適切なアドバイスが受けられます。

普段からのんでいる市販のくすりでも、自己判断ではなく専門家からアドバイスを受けましょう。安心してくすりをのむためにも大切なことです。

妊娠と薬情報センター

厚生労働省の事業として2005年に設置され、以降、相談・情報収集を実施している機関です。

全国に拠点病院があり、問診票などの必要書類を郵送後、電話や全国にある「妊娠とくすり外来」への相談が可能です。利用方法など詳しい情報はホームページをご覧ください。

妊娠と薬情報センター(国立成育医療研究センター内)

TEL:03-5494-7845
http://www.ncchd.go.jp/kusuri/

地域の病院や薬剤師会など

病院のイラスト,授乳,くすり,

各地域で相談場所を設けている場合があります。例えば東京の場合、虎の門病院、聖路加国際病院などに相談窓口があります。

*相談するにあたってくすりの成分が分からないときは、医薬品添付文書(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構http://www.pmda.go.jp)やくすりのしおり®(一般社団法人 くすりの適正使用協議会http://www.rad-ar.or.jp/siori/)、セルフメディケーション・データベース(日本OTC医薬品協会http://search.jsm-db.info/main2.php)で調べることができます。

本情報がまとまった冊子版(PDF)はこちら

・掲載内容や連絡先等は、現在と異なる場合があります。
・表示価格は、改正前の消費税率で掲載されている場合があります。ご了承ください。

関連するキーワード