目次
1.「妊娠とくすり」Q&A
Q1.妊娠しているとは知らずにくすりをのんでしまったら?

A. 妊娠していることを知らずにくすりをのんでしまったら、医師や薬剤師に連絡して、どうすれば良いかを相談してください。
「妊娠とくすり外来」を設けている病院を訪れる多くの方が、妊娠しているとは夢にも思わずくすりをのんでしまったことについて相談しています。
実際は、妊娠のごく初期にのんだくすりは、赤ちゃんへの影響はほとんどないといわれています。多くのくすりはのんで1日もたてば、お母さんの体の中から消えます。
市販のかぜぐすりや頭痛薬、胃腸薬などや短期間のむくすりは、妊娠4週(月経予定日を過ぎているのに月経が来ないころ)までに中止すれば、赤ちゃんに影響することはまずありません。
もし仮に、受精後2週間以内にくすりの影響を受けた場合は、着床しないあるいは流産する、または完全に修復されて健康な赤ちゃんを出産すると考えられています。
ですから、いま妊娠が順調に経過していれば、赤ちゃんへの影響はなかったと考えて大丈夫です。
2.病気をもっている方の妊娠とくすり

出産年齢の高齢化に伴い、病気をもちながら妊娠を望む方が増えています。
慢性の病気をもっている方は、将来の妊娠に備えて、妊娠の時期や今後の治療方針、くすりについて、治療を受けている医師(妊娠後は産婦人科医と連携)に相談することが大切です。
お母さんの健康は、おなかの赤ちゃんの健康に直結します。妊娠前、妊娠中、出産後…どうすれば良いかを早めに聞いておきましょう。
そしてあらかじめ相談しておいた手順に従ってくすりの服用を中止したり、変更したり、数を減らしたり、ときには増量してください。
くすりをのむ、のまないは、メリットとデメリットのバランスをみて決めます。その判断には専門的な知識が必要です。
たとえ赤ちゃんにとって安全といいきれないくすりでも、くすりをのみながらお母さんの病気を治療した方が、赤ちゃんの健康につながることも少なくありません。
自己判断しないで、医師や薬剤師からきちんと説明を受けてください。
〝病気とくすり〟の例
糖尿病
妊娠前から妊娠中にかけてくすりをのんだり注射をしながら病気をコントロールしないと、赤ちゃんの健康に大きな影響をおよぼすことがあります。栄養指導や運動療法のアドバイスを受けることも大切です。
てんかん
てんかんのくすりは赤ちゃんに影響することがあります。しかし、てんかんの発作が起これば赤ちゃんへの影響はさらに大きくなります。
妊娠が具体的になる前に、くすりの種類や量を減らせないか、より安全なくすりに変更できないかを治療を受けている医師とよく相談してください。
うつ病
治療を受けている医師にあらかじめ相談してから妊娠を計画してください。そして妊娠する1年以上前ぐらいから計画的にくすりの減量、より安全なくすりへの変更、精神療法の導入などをすすめてください。
妊娠中であっても、お母さんや赤ちゃんに必要がある場合はくすりを使います。くすりが必要であるかどうか、まずは治療を受けている医師とよく相談してください。
病気をもつ人、妊娠中にくすりを服用しなくてはいけない人が 医師や薬剤師に相談する時のポイント
なるべく早めに相談しましょう
早めに相談すれば、十分に時間をとって準備することができます。相談の時期は早過ぎることはありません。
妊娠する前から、余裕をもって今後の治療方針やくすりについて治療を受けている医師に相談してください。
納得できるまで相談しましょう
通常の診療時間中で時間をとるのが難しければ、別の時間に説明してもらったり、妊娠とくすりの専門病院や薬剤師を紹介してもらったりしましょう。
担当医の方針がどうしても納得できない場合は、セカンド・オピニオンを希望してください。
家族も一緒に相談を 受けると良いでしょう
できればパートナーにも今後の妊娠の計画や治療方針について理解してもらいましょう。通常の診療時間は待っている患者さんも多く、医師も時間がとれないことがあります。
診療の最後に時間をとってもらうのも一つの方法です。
別の専門医を紹介されたら、 必ずそこに受診しましょう
個々の医師や薬剤師がその分野の専門家とは限りません。別の専門医を紹介されたら紹介状をもって必ずそこに受診しましょう。適切な専門家によく相談することが大切です。
3.妊娠中の一時的なくすり
妊娠中、かぜや便秘などで一時的にくすりの服用を考える時も、かならず医師や薬剤師に相談してください。ここでは主な病気とくすりをまとめました。
もっと知りたい ~妊娠後半期の痛み止め~

おなかの赤ちゃんは、羊水の中にいるため、肺で呼吸をしていません。そのため、生まれてからとは違って、たくさんの血液が肺を循環することはありません。
おなかの赤ちゃんの血液は、心臓から直接、「動脈管」という特別なバイパスを通って全身に運ばれます。生まれるとすぐに、この「動脈管」は自然に閉じられ、肺へたくさんの血液が循環するようになります。
ところが痛み止めの多くは、まだお母さんのおなかの中にいるうちから、動脈管を閉ざすように働いてしまいます。
また、このくすりは、妊娠後半期の羊水の量を極端に少なくしてしまうことがあります。羊水は臍帯(へその緒)が圧迫されるのを防いでいます。
そのため、ときには臍帯(へその緒)が圧迫され、赤ちゃんに大きな影響を及ぼしてしまうことがあります。このような理由から、妊娠の後半期に痛み止めを使いたいときは、特に慎重になる必要があります。
(参考)「妊娠・授乳とくすり」相談窓口
妊娠と薬情報センター
厚生労働省の事業として2005年に設置され、以降、相談・情報収集を実施している機関です。
全国に拠点病院があり、問診票などの必要書類を郵送後、電話や全国にある「妊娠とくすり外来」への相談が可能です。利用方法など詳しい情報はホームページをご覧ください。
妊娠と薬情報センター(国立成育医療研究センター内)
TEL:03-5494-7845
http://www.ncchd.go.jp/kusuri/
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地域の病院や薬剤師会など

各地域で相談場所を設けている場合があります。例えば東京の場合、虎の門病院、聖路加国際病院などに相談窓口があります。
*相談するにあたってくすりの成分が分からないときは、医薬品添付文書(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構http://www.pmda.go.jp)やくすりのしおり®(一般社団法人 くすりの適正使用協議会http://www.rad-ar.or.jp/siori/)、セルフメディケーション・データベース(日本OTC医薬品協会http://search.jsm-db.info/main2.php)で調べることができます。
本情報がまとまった冊子版(PDF)はこちら
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