発売日を間近に控え、 完成した絵本を振り返る
――もう間もなく絵本が発売します! 発売を間近に控え、いまのお二方の率直な感想をお聞かせいただけますか?

タケト 僕はカオリさんの書籍を読んだとき「母親の愛って深いな」というのを強く感じたんです。
僕も3歳の娘がいて、可愛くて可愛くてしょうがないんですが、その愛情をもってしても、嫁さんの娘に対する愛情には到底かなわない。
だから僕は今回の絵本を通じて、その「母親の愛の深さや偉大さ」を伝えることを第一に考えていたのですが、なんとかそれを表現できたと思っています。
嫁さんは「これはタケちゃんの集大成だから、本が発売されるまで楽しみを取っておく」と言って一文字も読もうとしないんですよ。「集大成って、むしろ俺、これからなんだけど」って、突っ込みたかったですけど、そんなこともあり、いまはとにかく発売が待ち遠しいです。
カオリ 私自身、子育てはひと段落していますが、以前から次世代の子どもたち、そして現在進行形で育児をされている親御さんに、何らかの形で貢献したいという漠然とした気持ちがあったので、今回、タケトさんが豊かな表現力で素敵な絵本に仕上げてくださったことに、ただただ感謝しています。自分に孫ができたら絶対に読み聞かせします(笑)
――今回は、タケトさんがカオリさんに何度も取材を行い、絵本のシナリオを完成させたという経緯がありますが、カオリさんは最初、ここにあるプロット(ストーリーの要約)を見たときはどんな感想を持ちましたか?

カオリ タケトさんとお話していくなかで、私自身は、我が家のバックグラウンド、私の子どもとの向き合い方などを含めて、すべてを包み隠さずお伝えしました。
だからこそだと思いますが、初めてストーリーを見たとき、自分自身が子育てに奔走していたときのことを思い出して懐かしい気持ちになり、それと同時に、当時の自分にエールを送ってもらっているような嬉しい感覚にもなりました。
しかもそんななかに、子どもが喜びそうな展開がしっかり盛り込んである。
芸人さんのアイデア、表現力ってやっぱりすごいなと、あらためて思いました(笑)
タケト ホントですか!? 僕はこの(自分で描いたラフなイラスト入りの)プロットを一番最初に自分の娘に見せたんですが、絵が下手くそすぎたこともあって「なにこれー?」って感想でしたよ(笑)。
でも真面目な話、僕はもう少し娘が成長したときにこれを読んで「お母さんって優しいな。ありがたいな」って思ってくれたら最高だと思っています。
勝手な話ですが、絵本のシナリオを考えながら一番喜ばせたいと思ったのは、よその子どもではなく、最も身近にいる自分の娘だったんです。
だからここだけの話、絵本のなかにしれっと自分の娘の名前(こはる)を盛り込めないか……って、考えたんですが、私情を挟むのはよくないと思ってグッとこらえましたよ。
――ちなみにタケトさん、絵本のなかに登場するお母さんは、捉え方によっては、現代では少し厳しいお母さん像のような気もしますが、何か狙いがあるのでしょうか。やっぱりモチーフはカオリさんですか?(笑)

タケト そういうわけではないのですが、ただ、本を読んだときに感じた「カオリさんが語るエピソードやお弁当に書いてある毒舌」と「その裏側にある本当の優しさ」のギャップは表現したいと思いました。
芸能界でいうと、ヒロミさんや坂上忍さん、有吉(弘行)さんは毒舌キャラとして知られていますが、厳しいことを言ったあとの表情を見ると優しい笑顔なんです。
カオリさんも娘さんに対して、時に厳しい言葉を投げかけますが、お子さんのことを大事に考えているし、大好きじゃないですか。
今回の絵本でも、そういった部分の世界観は大事にしたつもりです。
目指したのは、子どもにとって 一生の宝物になりうる絵本
――絵本のなかで、カオリさんのお気に入りのページを教えていただけますか?

カオリ 私が好きなのは、オリジナルキャラ弁当「キャーットちゃん」(※編集部注:作中に登場するママが、娘を喜ばせようと考えたオリジナルの猫のキャラ弁当)が出てくるページです。このお弁当を見た瞬間、私も作ってみたいなぁと思いました(笑)
タケト あ、ちなみにこれ、悲鳴の「キャー」と猫の「キャット」がかかってるの、すぐにわかっていただけました?
カオリ わかりましたよ。この猫、気持ち悪いですけど、作り甲斐がありそう(笑)。
あとは、何といっても表紙ですね。私にとっても娘にとっても思い出の場所になっている八丈島の底土海水浴場をモデルにしていただいたんです。
娘が小さいころ、よく一緒にこの海水浴場に行っていて、本当に表紙の絵のように大岩の陰でお弁当を食べていたんです。
表紙のイラストを見たときは、当時の記憶がよみがえってきて本当に嬉しかったです。
――今度はタケトさんにお聞きしますが、とくにこだわった部分を教えてください。

タケト クライマックスのお母さんから子どもへのメッセージ入りのお弁当が登場するシーンに、絵本を買った人が写真を挟めるように切れ込みを入れたことですかね。
カオリ これは素敵な試みですよね。
タケト ありがとうございます。
母親の子どもに対する愛情って不変のものだと思いますし、生まれた以上、お母さんがいない人はいないわけで、絵本のストーリーは誰にとっても少なからず“あるある”だと思うんです。
ただ、最後のお弁当の部分……親から子どもに託すメッセージというのは、親子関係や家庭環境によっても違う気がします。
だからこそ、クライマックスの部分は、この本を買ったお母さん、もちろんお父さんにも、自分の言葉で直接お子様にメッセージを送ってほしい。
あわよくば、カオリさんのようにお弁当の上にメッセージを書き込んで、それを写真に撮って挟み込んでほしいという気持ちで、最後の最後で担当編集の方に無理を言って実現してもらいました。
――なるほど。ネタバレになるのであまり言えませんが、タケトさんのそういった気持ちは、絵本の最後のひとコマにも端的に表れていますよね。では最後に、この絵本をどんな人に買ってほしいかを、それぞれ教えていただけますか?
タケト どんな人というよりは、まずは自分が娘に読みたいです(笑)。
あとは、あえて世のパパにもおすすめしたいです。
お子様に読み聞かせしつつ、奥様(母親)の偉大さを再認識してほしい……という気持ちを込めて。
カオリ 私的には、幼児向けの絵本とはいえ、すごく幅広い層が楽しめる作品だと思うので、子育て中のお母さんはもちろんですが、子育てから解放された親御さんも、懐かしさや共感という部分できっと感情を揺さぶられると思うので、読んでみてほしいなと思います。
ぜひよろしくお願いします。
〓絵本〓

『きょうもいやがらせべんとう』
2015年6月30日発売 本体1250円+税
『今日も嫌がらせ弁当』を原案とした絵本。主人公の女の子の幼少期から大人にかけての成長と、それを支えた母親のお弁当のお話。
今回、ご紹介した商品の詳細はこちら
・表示価格は、改正前の消費税率で掲載されている場合があります。ご了承ください。