子どもが生まれる前は、きっとそこまで気にしていなかった「挨拶」。
 
学校へ行き始めると、いろいろなお友達が家に遊びに来たり、自分の子どもも相手の家にお邪魔したりということはよくあります。そんななか、たびたび遊びに来るけれど挨拶ができない、あるいは態度が少しほかの子と違う…なんて子がいたら、あなただったらどうしますか?
 
単純に「挨拶ができない子」だけで片づけられない、見た目の行動からではわからない、様々な理由がその裏には隠されていたりします。前回に引き続き、後編である今回も子育て支援NPOに関わる筆者が、実際に相談を受けたケースも一緒にご紹介します。
 
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ご挨拶やお礼がちゃんと言えない子への対処法|後編


挨拶することに「困難」がある子


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遊びに来たからと、大人から「こんにちは」「いらっしゃい」と声をかけたのに、きょとんとしたり、ぼーっとして無反応のまま、こちらをじっと凝視する子がいます。あるいは、ものすごく間が空いてから「こんにちは」と、淡々と機械的に返してくる場合も。
 
遊びに夢中になっていて、何度か声をかけたのに、完全スルーという子もいます。それで、イラッとしてちょっと大きな声で呼びかけると、飛び上るほどびっくりして、「脅かさないで」と言ったりします。
 
ちょっと気を付けて見ていると、おやつの時に「いただきます」が言えなかったり、友達が遊んでいるおもちゃをひったくったり、テレビをじーっと固まって凝視したりすることもあるかもしれません。
 
お子さんによっては、口数が極端に少なかったり、なんとなく全体的にぎこちなさやギクシャクしたような動きだったりします。反対に、やたらとぺらぺらと口数が多く、始終活発なのに、挨拶だけはマトモにできませんというタイプもいます。
 
こういうお子さんはもしかしたら、何かの「小さな困難」があって、挨拶することが少し難しいのかもしれません。
 
例えば、広汎性発達障害の診断を受けている人は、大人も子どもも挨拶がとても苦手です。挨拶は『対面して○秒後に××度の角度で会釈をして、この音程・音量で「こんにちは」という』みたいなルールがありません。
 
ザックリとルールをつかむのが難しいこの障害の人には、決まりがとてもあいまいな挨拶はとても分かりづらいのです。
 
広汎性発達障害には、人の顔を見分けるのが難しい特性もあるので、例えば、毎日会っているお友だちのママでも、違う場所だと「同じ人」と識別するまでに物凄く時間がかかります。(何しろ自分の母親の顔さえ、見失うことがあるのがこの障害です)
 
「誰だっけ?」と確認ができるまで、挨拶が出てこないこともあります。
 
ADHD(注意欠陥多動障害)の場合、挨拶をするべき場面で、他のことに気を取られていると、そこに人が居ることに気づかないほど集中してしまっている場合があります。
 
「過集中」と呼ばれるこの症状は、広汎性発達障害にも起こります。大きな声でびっくりして、初めて人の存在を認識する、という訳です。広汎性発達障害の人は「突発的」な出来事には非常に過敏で、強い苦手意識を持っているので「驚かさないで」と文句を言うことが多いです。
 
これらは、診断がついている人に見られる特徴ですが、似たような症状が成長途上の子どもに現れる場合があります。「発達の偏り」と呼ばれる現象です。
 
発達の偏りは、それが起こっているから、即、発達障害児というわけではありません。ごくごく軽い、わずかな困難の場合は、障害と判断されません。
 
それぞれのお子さんの発達には個人差があり、成長過程の中で何かしらの一時的なアンバランスが出来て、「他の子より速い」「他の子より遅い」という分野があるのは当然のことです。いずれにしろ診断は素人にはできないことです。
 
また、親御さんの考え方で、「実は診断がついているけれど、人には知られたくない」という可能性もあります。親御さん自身にも小さな困難が隠れていると、そもそも気が付きにくいということも多いです。
 
結論から言えば、こうした小さな困難があるお子さんも、成長していく過程で困らない程度の挨拶はできるようになっていきます。
 
ただし、そのタイミングは平均的なお子さんと比べたら、ややゆっくりです。周囲の協力や専門的なサポートの有無によって、その歩みにはかなりのバラつきがあります。
 
「もしかして…」と思われる特徴があるようなら、まずは「長い目」で見ましょう。「今、出来ていないのは、しつけが足りない」と決めつけるのも、相手の親御さんや、お子さんにとって大変不公平な判断になってしまいます。
 
発達障害かも?と気になるような点が多くても、直接ママに聞いたりするのは絶対控えましょう。診断されていないかもしれませんし、人によっては「障害児呼ばわりされた!」と逆切れる可能性があります。
 
いずれにしても、プライバシーにかかわるデリケートな問題ですから、こちらから質問するのはお勧めできません。
 
反対に、相手のママから「実は…」と打ち明けてきてくれるなら、なるべく話を聞いてあげるのは、非常に良いことです。発達障害傾向のあるお子さんを育てているママは、健常児にはない気苦労が多いものです。暖かい励ましや、「気にしなくていいよ」という言葉で、肩の力が抜けた、とおっしゃるママが多いのです。
 
もし、ママが話してくれるのであれば「どのように接したらいいのか?」を教えて貰うことで、お互いに不要なトラブルを防ぐこともできます。
 
無理に何もかも合わせてあげる必要はありません。できる範囲で協力するよ、という姿勢を示してあげることが、良い関係を作る上でも非常に効果的です。
 
 

親切心がかえって長く悪影響を残すこともある


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挨拶は社会生活の基本。それだけに「出来ていない子」を見ると注意したくなる、というのは、ママの高い社会意識と親切心の表れだと思います。本来は、家庭で学ばなければならないことを、家族以外から注意してもらえるのは良い効果が多いのも事実です。
 
しかし、「発達に偏りのある子」の中には、こうした注意や指導に特別な配慮が必要な場合があります。特に診断がついていて、ママもそのことをお友達に伝えているようなときは、挨拶やお作法について年齢相応を求めると、後々まで悪い影響が残ってしまう場合があります。
 
もともと、困難のあることなので、叱ったり、頑張ったりでできるようになるとは限らないからです。
 
最後に1つ、実際にご相談いただいた事例を踏まえ、皆さんに知って頂きたいことをお伝えしたいと思います。
 
とある兄弟がお友だちの家に遊びに行ったとき、ご挨拶ができませんでした。初めての訪問先で緊張して、とっさに挨拶を忘れてしまったのかもしれません。そのため、訪問先のお父さんからキツクお叱りを受けたという出来事がありました。
 
実は、このお子さんは、発達障害児でした。
 
この一件がトラウマになって、このお子さんは、学校でも挨拶が普通にできなくなってしまいました。それで悩んだお母さんが、相談に見えたのです。結果的に、普通の挨拶ができるまでに回復するのに何年もかかり、今でも、ちょっとした拍子に当時を思い出して硬くなることもあるのだそうです。その間、家族はずっと、辛い思いで暮らしてこられたと思います。
 
確かに挨拶ができないことは、お行儀としては良くありません。でも、家庭の事情や発達障害は目で見て分かるものではありません。常識のつもりでした注意が、一人の発達障害児に、生涯に渡ってダメージを与えてしまう可能性もゼロではないのです。
 
もちろん、しつけとしての注意や叱ることには必要です。叱る側にもパワーも、熱意もいるでしょう。
 
けれども、見えない困難に気づかずに行ったことが、双方が辛い思いをしてしまう場合があります。善意から出た行動でも、目に見えず、知らなかったがために、相手に不適切な行動になってしまうというリスクは常に隠れています。
 
叱る場面でも、「もしかしたら…」を忘れないでいていただければ、と思います。
 
 

まとめ


いかがでしたか?発達に偏りのある子は、そもそも、挨拶やお礼が苦手になりやすいという特徴があります。強く叱ったり、ママに厳しい意見を述べるのは、良い方法とはいえないので、控えたほうが良いでしょう。
 
むしろ、特徴を知って協力し合える関係を作ることで、お友だちとも仲よく成長していけるほうが望ましいと言えます。
 
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