医療費控除ってどんな制度?基本から解説

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医療費控除について詳しく見ていく前に、まずは税金の基本的な仕組みについて確認しておきましょう。

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私たちが納める所得税や住民税は、「課税所得」などをもとに計算されます。

課税所得は、「収入」から必要経費や給与所得控除などを差し引いて求めた「所得」から、さらに「所得控除」を差し引いたものです。

計算の流れを式で表すと、次のようになります。
■「収入」-「必要経費・給与所得控除など」=「所得」
■「所得」-「所得控除」=「課税所得」


所得控除とは?

所得控除とは、一定の要件を満たす場合に、所得から条件に応じた金額を差し引ける仕組みです。

所得控除によって課税所得が小さくなると、税金を計算するもとになる金額も小さくなるため、税金の負担を軽くできます。

所得控除には、家族を養っている人が利用できる「扶養控除」などさまざまな種類があり、今回紹介する「医療費控除」もその一つです。

医療費控除ってどんなもの?

医療費控除は、1年間(1月1日〜12月31日)に自分や家族のために支払った医療費が10万円を超えたとき、所得税・住民税の負担が軽くなる制度です。
※総所得金額等が200万円未満の人は「総所得金額等の5%」を超えたとき

制度を利用するためには、医療費を支払った翌年に確定申告が必要です。

申告すると医療費控除を反映して税金が計算され、所得税が戻ってきたり、翌年の住民税が安くなったりします。

控除額はどう決まる?

医療費控除額は、次の式で計算します。

「1年間に支払った医療費の合計」-「出産育児一時金などで受け取ったお金」-「10万円または総所得金額等の5%のいずれか少ない額」 =医療費控除額(上限200万円)

計算にあたって、2つのポイントがあります。

①給付金や保険金は差し引く
出産育児一時金や高額療養費、生命保険の入院給付金など、医療費を補てんするために受け取った給付金や保険金がある場合は、支払った医療費から差し引いて計算します。

補てん金は、その給付の対象となった医療費から、その医療費の額を上限として差し引きます。また、出産手当金は差し引きません。

差し引いたあとの金額が10万円に満たない場合は、医療費控除の対象外となります。
※総所得金額等が200万円未満の場合は、総所得金額等の5%が基準となります。

②家族の医療費を合算できる
1年間に支払った医療費は自分ひとり分だけでなく、生計を共にする家族全員の医療費を合算して計算できます。

妊娠・出産の費用だけでは10万円に届かなくても、家族の医療費の合計が10万円を超えれば対象になります。

「控除額」=「戻ってくる金額」ではない

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ここで押さえておきたいのが、「医療費控除額」と「実際に戻ってくる還付金」は別物だということです。10万円を超えた分がそのまま口座に振り込まれる、という意味ではありません。

還付金は、次の式で計算します。
医療費控除額 × 所得税率 = 還付金

所得税率とは、所得(課税所得)の金額に応じて決まる税率のこと(別表参照)で、所得が多い人ほど税率も高くなる仕組みになっています。

たとえば、
・出産費用の合計:70万円
・出産育児一時金:50万円
・課税所得:300万円(所得税率10%)

だった場合、

医療費控除額:70万円-50万円-10万円=10万円
還付金の目安:10万円×10%=1万円


となります。控除額は10万円でも、実際に戻ってくるお金は1万円です。

医療費控除額が同じでも戻ってくる金額は人によって変わります。

還付金をシミュレーションできるWebサイトもあるので、実際にどのくらい戻ってくるのか知りたい場合は、利用してみるといいですね。

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医療費控除の対象になるもの、ならないもの

妊娠・出産にかかったお金が、すべて医療費控除の対象になるわけではありません。

国税庁の基準をもとに、一般的に対象になるもの・ならないものを整理しました。

対象になる費用

・妊婦健診の自己負担分
・切迫早産など、医師が必要と判断した入院費用
・出産のための入院費用(分娩費・入院基本料など)
・入院中に病院から出される食事代
・妊婦健診などの通院や、出産のための入院にかかった電車・バスなどの交通費
・陣痛などで、電車やバスを利用することが難しい場合のタクシー代
・不妊治療や人工授精にかかった費用

対象にならない費用

・妊娠検査薬の購入費用
・NIPT(母体血を用いた出生前遺伝学的検査)の費用
・里帰り出産のための帰省交通費
・入院時のパジャマや洗面用具などの身の回り品
・差額ベッド代(自分の希望で個室にした場合)
・入院中の出前や外食にかかった費用

医療費控除は、診療や出産そのものにかかった費用のほか、それらを受けるために直接必要な費用も対象となります。

たとえば、妊婦健診のために電車やバスで通院した際の交通費は対象になります。また、陣痛が始まったなどの理由で公共交通機関の利用が難しく、タクシーを利用した場合も対象になります。

一方、里帰り出産のために実家へ帰省する交通費は、診療などを受けるために直接必要な交通費には当たらないため、医療費控除の対象にはなりません。

また、NIPT(母体血を用いた出生前遺伝学的検査)の費用は、治療を目的とした検査ではないため、医療費控除の対象にはなりません

実際に対象になるかどうかは個々の状況によって異なることもあるため、判断に迷った場合は税務署や税理士に確認しましょう。

確定申告はどうやるの?

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医療費控除を受けるには、確定申告が必要です。会社員で年末調整をしている人も、医療費控除だけは別途申告しなければならないので注意してください。大まかな流れは次の通りです。

【1】1年間にかかった医療費を確認する
1年間(1月1日〜12月31日)に支払った家族の医療費を確認します。加入している健康保険(健康保険組合や国民健康保険など)から届く「医療費のお知らせ」(医療費通知)や領収書、通院にかかった交通費の記録などを用意しましょう。

【2】「医療費控除の明細書」を作成する
医療を受けた人の氏名や医療機関名、支払った医療費、保険金などで補てんされた金額などをまとめ、「医療費控除の明細書」を作成します。

明細書は国税庁のWebサイトからダウンロードできるほか、「確定申告書等作成コーナー」で画面の案内に沿って入力しながら作成することもできます。

【3】確定申告書を作成する
源泉徴収票などをもとに、収入や所得税額など必要な情報を入力して確定申告書を作成します。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用して作成することもできます。

【4】確定申告書を提出する
作成した確定申告書は、e-Tax(オンライン)のほか、郵送や税務署への持参などで提出できます。マイナンバーカードがあれば、e-Taxを利用して自宅から申告することもできます。

【5】還付金の振り込みを待つ
還付までの期間は、書面で提出した場合はおおむね1〜1.5ヶ月程度が目安です。e-Taxで提出した還付申告は、3週間程度で処理されています。

なお、会社員などが医療費控除によって所得税の還付を受ける「還付申告」は、医療費を支払った年の翌年1月1日から5年間行うことができます。通常の確定申告期間を待つ必要はありません。

産後は何かと忙しい時期なので、すぐに手続きができなくても大丈夫です。5年間の申告期間内であれば、育児が少し落ち着いてから申告できます。

マイナポータル連携なら入力の手間を減らせる

マイナンバーカードを使ってマイナポータルと連携すると、医療費通知情報を取得し、確定申告書等作成コーナーに自動入力できます。家族分の医療費通知情報も、条件を満たせば取得して申告に利用できます。

ただし、通院にかかった電車・バス代など、マイナポータルから取得できない医療費は自分で追加する必要があるので注意しましょう。

医療費控除の申告で損をしない!スムーズに手続きをするための5つのポイント

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最後に、申請で損をしないために気をつけたい基本のポイントをまとめます。

①領収書・レシートは必ず保管する
確定申告の際、医療費の領収書やレシートを提出する必要はありませんが、「医療費控除の明細書」の内容を確認するため、税務署から提示や提出を求められることがあります。そのため、一定の場合を除き、確定申告期限等から5年間の保管が必要です。

妊娠がわかったタイミングで、医療費専用の封筒やファイルを用意しておくと管理しやすいですね。

②交通費は記録しておく
領収書が出ない通院の電車代・バス代も対象となります。あとで困らないよう、家計簿アプリなどで日付・区間・金額の記録をこまめに残しておきましょう。

③家族分もまとめて計算する
自分の医療費だけでは基準額を超えなくても、生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費も合算できます。家族の領収書も必ず保管しておきましょう。

④出産育児一時金などの「補てん額」を忘れずに引く
出産育児一時金や高額療養費、生命保険の入院給付金など、医療費を補てんするために受け取った給付金や保険金は、医療費控除額を計算するときに差し引きます。いくら受け取ったのかも忘れずに記録しておきましょう。

⑤セルフメディケーション税制との選択制に注意
セルフメディケーション税制とは、対象となる市販薬を一定額以上購入した場合に、所得控除を受けられる制度です。医療費控除とは併用できないため、両方の対象になる場合は、どちらか一方を選んで申告します。

どちらを利用したほうが控除額が大きくなるか、申告前に確認しておくとよいでしょう。

妊娠・出産は出費がかさむ時期です。使える制度を上手に活用して、家計の負担を少しでも軽くしていきましょう。

※本記事は、医療費控除について一般的な情報を紹介するものです。個別の状況によって取り扱いが異なる場合がありますので、詳しくは税務署や税理士にご確認ください。

まとめ

妊娠・出産は、何かと出費が増える時期です。医療費控除を利用することで、税金の負担を少し軽くできることがあります。

対象になる費用や申告方法を確認して、家族の医療費も含めて上手に制度を活用してくださいね。
(監修:1級ファイナンシャル・プランニング技能士 中野宏紀 )

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